現状に満足せず挑戦の道を選んだ男の決断
一見クールな印象を受ける松井だが、飾らない性格に周囲は惹きつけられている。大卒2年目の荒木大吾もその一人だ。
「食事にも連れて行ってもらったけど、物腰柔らかく、ゆるい感じというか。話をしていて、人生を楽しんでいるというのがわかるんです。本当に一番かっこいいと思う。自分の好きなことをやり続けて、カリスマ性もすごいし。ダイさんにだけはずっと緊張してました。喋るのは大丈夫だけど、一緒にプレーする時。やっぱりプレーをずっと見てきた人だから、かな。すごい人と一緒にやっていたんだなと改めて思う」
プロサッカー選手として自身の力で道を切り拓く姿はもちろん、どのように生きるかという点も松井は重視している。
「日本ではできない経験が向こうにはたくさんあると思うし、言葉や文化を知ることが勉強にもなると考えた。良くても悪くてもいいと思う。人には色々な人生があると思うので、壁にぶち当たってももがきながら進んでいきたいなと。(磐田に)残る方が楽とは決して思わないけど、もっと厳しい方に身を置くことによって何かを得られたら、自分にとってそれが一番いいのかなと。
サッカーを楽しむこともそうだけど、人生の楽しさというか光を見つけながら生活していきたい。向こうでは不自由なこともあるかもしれないけど、それを楽しみながら人生を進んでいければなと思う」
尊敬され、慕われ、愛され……。どんな境遇であってもブレない姿勢、醸し出すオーラ、ピッチで見せる献身とファンタジー。その全てが、ジュビロ磐田の松井大輔だった。現状に満足せず挑戦の道を選んだ男の決断を、誰もが『らしい』と納得している。
(取材・文:青木務)
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