若手MFと居残り練習の日々。W杯戦士との貴重な時間
京都パープルサンガ(現・京都サンガF.C.)で頭角を現すと、ヨーロッパでも足跡を残し、日本代表として2010年南アフリカW杯決勝トーナメント進出にも貢献した。日本サッカーの歴史に残るような選手との時間は、特に若手にとっては貴重なものだった。
高卒3年目の上原力也は、JリーグYBCルヴァンカップ・グループステージ第5節・清水エスパルス戦でプロ初ゴールを記録した。PA内での巧みなボールタッチから右足を振り抜いてネットを揺らしたが、この一発には松井との居残り練習の日々があった。
「ダイさんと居残りでシュート練習をしてきたおかげです。あれをやっていなかったら、フィニッシュまで持ち込めなかったと思う」
またこの2人は、5月の明治安田生命J1リーグ第13節・サンフレッチェ広島戦に向けた練習中に、競り合いで激突。松井は頭を、上原は眉の下辺りをそれぞれ5針以上縫う怪我を追った。
「一緒に病院に行って、隣のベッドで治療してもらって。『すいません』って謝ったんですけど、『俺も見えていなかったし、サッカーだからしょうがない』と言ってくれた。4時間くらい病院にいたんですけど、サッカーやプライベートのことをたくさん話せました」
ピッチに立てば年齢もキャリアも関係ない。たった一つのボールを巡って真剣勝負を繰り広げる中で、アクシデントは起こりえる。上原もそれはわかっている。それでも、大先輩からの言葉は気持ちを軽くしてくれた。
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