日本とスペインの大きな違い。プロになる選手の特性
多くの日本人選手にとって憧れの地でありながら、同時に鬼門でもあり続けたラ・リーガにおいてようやく「成功」という言葉を用いることのできる日本人選手が乾貴士(SDエイバル)だ。
昨季の最終節バルセロナ戦では、敵地カンプ・ノウで衝撃の2ゴールを奪い、チームは敗れたものの大きなインパクトを残して16/17シーズンを締めくくった。
筆者は兼ねてからラ・リーガが日本人選手にとって「最難関」という持論を持つ。なぜなら、ラ・リーガは日本人選手に最も欠けている戦術面のレベルが欧州最高のリーグであるからだ。
スペインの育成年代ではジュニア年代から当たり前のようにきめ細かい戦術指導がなされ、10年スパンの育成期間で選手は着実に戦術メモリーを増強していく。
一方、日本は特にジュニア年代で数多くのボランティアコーチに頼る脆弱な育成環境で「小学年代からの戦術指導は早い」といった議論や意見がいまだに残っている。
長年、日本とスペインのサッカーを取材していて最も違いを感じる点は、プロになる選手の特性だ。日本では足元の技術に長けた「上手い選手」を高く評価し、そうした選手がプロになる傾向がまだまだ強い。
しかし、スペインでは足元の技術に優れていなくともプロで活躍する選手が意外にも多い。足元の上手さは選手評価における一つの要素でしかなく、最終的には「サッカーを知っている選手」でなければ厳しいプロの世界で残れない。
だからこそ、2010年前後に到来したスペインサッカー黄金期を支えたシャビ・エルナンデス、イニエスタといった選手はスペインでは「サッカーを知っている選手」と評価されている。
日本での彼らの評価はパスサッカーを支える「パサー」や「テクニシャン」であったが、こうした文化や解釈の違いは些細なことであっても育成年代の10年で考えた時には「失われた10年」と表現できるほどの大きな差になっている。