ビッグクラブに限られない記録的出費
マンチェスター・シティはSBの補強だけで約1億2800万ポンド(約185億円)もの出費。買い渋りで知られるアーセナルまでもが、クラブ史上最高の移籍金4650万ポンド(約68億円)でアレクサンドル・ラカゼットを獲得。マンチェスター・ユナイテッドがエバートンに支払うロメル・ルカク獲得費用は、最終的に9000万ポンド(約130億円)に上る可能性を秘める。
今やプレミアリーグ勢の動きが目立つ夏の移籍市場は珍しくないが、今夏は「インフレ」、「プレミアム」、「身代金」といった表現で移籍金の高さが取り沙汰されている。
記録的な出費はビッグクラブに限られてはいない。現“ビッグ6”を追う立場のエバートンは、新GKジョーダン・ピックフォードと新CBマイケル・キーンを、共にクラブ史上最高額の2500万ポンド(約36億円)で格下から引き抜いた。プレミア定着を狙うボーンマスや、昇格1年目のブライトンとハダーズフィールドも今夏に移籍金の自己新記録を更新している口だ。
但し、それらの金額には目を見張らされても、このような現状は驚きではない。ワールドクラスが相次いで獲得されているわけではなく、実力以上の移籍金を支払わされている感は否めないが、起こるべくして事態なのだ。高額をふっかけられても仕方のない資金力を昨今のプレミア勢は備えている。
伝統的な迫力に加え、遅まきながら技術や戦術の面でも魅力を増しているイングランドのトップリーグは、他の欧州主要リーグのようなウィンター・ブレイクが存在しないセールスポイントも相まって、巨額の放映権収入を引き寄せ続ける。
“TVマネー”で潤うプレミア勢の収益は、今年1月にデロイト社が発表した「マネーリーグ」で世界1位のユナイテッドを筆頭に5クラブがトップ10に名を連ね、来年は全20クラブのトップ30入りが見込まれる規模にある。