「90分通して我々のゲームだった、と言えるような内容では決してなかった」
「やっぱり泥臭くというか、腹をくくって、覚悟を決めてやらないといけなかった。まあ、こういう試合も川崎相手だったらしょうがないでしょう。あれだけいい選手が揃っているんだから」
ミックスゾーンで報道陣に囲まれた中村俊輔は、疲労感と充実感を浮かべながら大雨の一戦を振り返っている。
明治安田生命J1リーグ第19節、ジュビロ磐田は川崎フロンターレに5-2で勝利した。カウンター、セットプレーといった武器を前面に押し出し、今季最多得点を挙げた。「あんなにポンポンと点を取ってくれたのが大きかった」という大井健太郎の言葉通り、攻撃の爆発はチームを奮い立たせた。
それでも、相手はあの川崎Fである。何度ネットを揺らそうが、セーフティリードではない――。そんな危機感を裏付けるような粘り強さはピッチの各所で見られ、その姿勢が13年ぶりの6連勝を生んだのではないだろうか。
「90分通して我々のゲームだった、と言えるような内容では決してなかった」
名波監督が認めたように、ボールを支配したのはホームチームで、磐田は苦しい展開を強いられた。防戦一方になる時間が長く、中村憲剛、大島僚太を中心とした川崎Fのサッカーに振り回されている。危険なエリアで相手をフリーにした場面も一度や二度ではなかった。だが、選手たちの集中力は最後まで切れなかった。
いかに川崎Fの攻撃をしのぐか、という点にフォーカスすればポジティブなプレーも多い。「ボールを奪っても向こうはすぐにプレッシングをかけてくる。そこで取られるのが一番危ない」と警戒していたのは中村俊輔だが、自分たちのダメージとなるようなミスもなかった。