最大の武器は多士済々の中盤。満を持して埼玉決戦へ
ただ、間違えないでいただきたい。なにも「ケーヒル、怖るるに足らず」と言っているのではない。来る日本戦で、おそらくベンチスタートになるケーヒルは、スーパーサブでこそ、その脅威が増す。「ケーヒルはいつ出てくるのか…」という意識を相手に持たせることが、どれだけ心理的に有効か我々はすでにメルボルンでの日豪戦で体験済みだ。
今のケーヒルを短時間での大仕事にフォーカスさせるーー。監督だけではなく、本人もそれを自覚している。日本の天敵は健在。ただ、その役割が違ってきただけだ。だから、決して侮ってはならない。
前線では、昨年からのコンスタントな活躍でトミ・ユリッチ(ルツェルン)がエースFWとしての立ち位置を確立した。現代表で純粋なセンターFWタイプはユリッチと今年からドイツに活躍の場を移したジェイミー・マクラーレン(ダルムシュタット)だけ。その他のFW登録の選手は、常連のレッキー、ロビー・クルーズ(ボーフム)などいずれもウィンガータイプの選手で、現行のシステムではサイドハーフとしての活躍も求められるている。
中盤の顔ぶれは豊富だ。その中でやはり存在感が抜けているのが、アーロン・ムーイ(ハッダーズフィールド・タウン)とトム・ロギッチ(セルティック)の両名。ケガで離脱していたキャプテンのミレ・イェデイナク(アストン・ヴィラ)が戻れば、コンフェデ杯でボランチとしてプレーしたムーイを攻撃的なポジションで起用できる。
そのままムーイをボランチの一角で起用するならば、マッシモ・ルオンゴ(QPR)、ジェームス・トロイジ(メルボルン・ヴィクトリー)といったクリエイティブな駒を前線で起用できる。さらには若手の成長株で攻撃的なポジションならどこでもこなせるジャクソン・アーヴァイン(バートン・アルビオン)も控える、というように、中盤は多士済々。誰が出てきても「豪州、変わったな」と思わせるに十分な実力を持っている。特にロギッチの得点力には警戒したい。
これまで、様々な名勝負が繰り広げられてきた日豪戦。今回の激戦は、試合後に「埼玉の〇〇」と語り継がれるようなものになるのか。もちろん、日本人としてはポジティブな言葉が〇〇に収まることを願う。そのためにも「敵を知る」ための情報を、ここ豪州から試合直前まで発信していくことで貢献できればと思う。
(取材・文:植松久隆)
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