地元でも確実に支持を集める高田社長の姿勢
問題の担当者は6月にクラブを自主的に退職し、近いうちに別のJクラブのスタッフになるという話も聞いた。上乗せされた入場者数を見慣れてしまっていたために、スタジアムでその日の入場者数がアナウンスされると、その数字に落胆するサポーターも少なくはない。そういう意味では、きれいに解決した結末ではないかもしれない。
だが、高田社長は「我々が運営に関わる以前に行なわれた問題ではあるが、それを含めて、クラブを引き継いだからには責任を果たす」と強く、そして穏やかに全てを受け止める構えだ。
そして「襟を正して乗り越え、すばらしいクラブにするよう頑張りたい」という言葉どおり、クラブはすでに再発防止策として入場ルールやチェック体制の見直しに着手。現在は一切の上乗せがされない数字が発表され続けている。
そして、こういったトップの姿勢は地元でも確実に支持を集めている。話を聞いた20代のサポーターは「長い間メインスポンサーとして、経営危機の時は支援先として、そして今回。ジャパネットさんは、もう3度もV・ファーレンを救ってくれた。今度は自分たちが一人でも多くの人をスタジアムへ誘ってクラブの力になりたい。」と語り、試合告知チラシの作成や配布をこれまで以上に行っていくつもりだという。
スポンサーにも迅速な調査や対応を評価する声は多く、今回処分を下したJリーグの村井満チェアマンも「不正確な数字が計上されたことは大変残念。現在、新経営陣が指揮を執ってくださっていますが、早く健全化することを願っています」とクラブへエールを送っている。
「選手、スタッフ、社員……今は、みんなで一緒に乗り越えていこうと常に話していて、今回のことも前向きにみんなで乗り越えるんだとなっています」
公式試合入場者数上乗せの問題に関する会見中、高田社長はこう語った。災い転じて福となすではないが、図らずも今回の問題を通じて、クラブとクラブを取り巻くサポーターのベクトルは一つにまとまりつつある。雨降って地固まるの言葉どおり、V・ファーレン長崎にとっての長い梅雨が終わるとき、クラブの土台はもっと強くなっているはずだ。
(取材・文:藤原裕久【長崎】)
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