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Jリーグ 7年前

広島、約10年親しんだ“可変システム”との決別。J1残留に向け採用された4バック

text by 藤江直人 photo by Getty Images

J2への降格という最悪の事態を避けるために

サンフレッチェ広島のキャプテンを務めるMF青山敏弘
サンフレッチェ広島のキャプテンを務めるMF青山敏弘【写真:Getty Images】

 単なる戦術という枠組みを飛び越えて、独自の「可変システム」はサンフレッチェというクラブに携わるすべての人間の拠りどころになっていると、森崎和は笑顔で語ってくれたこともある。

 しかし、プロの世界である以上は対峙するチームも対策を練ってくる。加えて「可変システム」を担ってきた主力選手たちが毎年のように抜ける、非情な現実も突きつけられてきた。

 この1年を振り返っただけでも、FW浅野琢磨(シュツットガルト)が旅立ち、佐藤が抜け、そして6月にはDF塩谷司もUAE(アラブ首長国連邦)の強豪アル・アインFCへ完全移籍している。

 そうした状況で陥ってしまった未曽有の大不振。リーグ戦における白星は、5月20日のヴァンフォーレ甲府戦を最後に遠ざかっている。ホームでは4分け5敗と、まだひとつも勝てていない。

 J2への降格という最悪の事態を避けるためにも、何かを変えなければならなかった。それが森保前監督の退任であり、10年目を迎えた「可変システム」との決別だった。

「守備のバランスは非常によかったと思うので、まずはそこから立て直していく。攻撃ではパト(パトリック)が入ったらもっと裏へのボールが出てくるし、カウンターだけでなくサイド攻撃も生きてくる」

 チームの心臓部を司る青山は、期限付き移籍で加入している巨漢FWパトリックを生かす術を早くも思い描く。見つめるのは未来へ可能性を求めることだけ、とばかりに水本も続いた。

「僕たちがやらなければいけないことは、やっぱり勝つことですから。特に8月は順位が近いチームとの対戦が多いので、そういう試合で勝ち点3をしっかり取りながら、一歩ずつ、一歩ずつ進んでいきたい」

 ヨンソン監督もタイトな守備からのカウンターだけでなく、両サイドからのクロスや、コンビネーションを駆使して相手ゴール前でファンタジーを作り出したいと設計図の続編をすでに描いている。

 パトリックだけでなく、オーストラリア代表歴をもつ前FC東京のFWネイサン・バーンズも加入した。J1残留圏内となる16位の北海道コンサドーレ札幌との勝ち点差は「5」。新たな歴史を紡いでいくために。過去の栄光を断ち切った、サンフレッチェの一丸になった戦いはこれから正念場を迎える。

(取材・文:藤江直人)

【了】

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