覚醒といっても過言ではない今シーズン
187センチ、79キロの恵まれた杉本のボディには高さと強さだけでなく、器用さも搭載されている。ゆえに昨シーズンは中盤のサイドやトップ下で起用されることが多く、セレッソ大阪U‐18時代には長身を見込まれて、センターバックとの二刀流に挑んだ時期もあった。
しかし、ユン監督は開幕から杉本をセンターフォワードに固定する。秘められている点取り屋としての潜在能力をすべて解き放て、とばかりに「後ろに下がりすぎるな」と厳命してきた。
「相手ゴールに一番近いポジションでやらせてもらっているので、やっぱり自分が点を取らないといけないと思っている。まだまだ足りないですけど、チームが勝てているから嬉しいですよ。ただ、昨シーズンから自覚というか、自分が点を取って勝てば気持ちがいいというのはありますね。
今日もレッズはズラタンとラファエル・シルバがゴールしましたけど、頼む、興梠(慎三)選手だけは取らんといてくれと。山下(達也)さん、ヨニッチ、頼むって。僕もあと2点は取れるチャンスがあったし、興梠さんに追いつけるチャンスがあったんですけど。まあ、コツコツとやっていきます」
12ゴールで得点ランキングのトップを走るレッズのFW興梠慎三を封印してくれたセンターバックコンビ、山下達也とマテイ・ヨニッチに杉本は苦笑いしながら感謝の思いを告げた。これで2ゴール差。逆転で得点王争いをリードする状況も不可能ではなくなってきた。
新たな夢も広がる。フロンターレ時代の2015年3月18日。当初の予定にはなかったフロンターレと名古屋グランパスのヤマザキナビスコカップ(YBCルヴァンカップ)予選リーグを視察した、就任直後の日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督はこんな言葉を残している。
「誰も私に教えてくれなかったが、興味深い選手を発見することができた。これから追跡していきたい」
一体誰なのか。答えは5月中旬に行われた、国内組だけを対象とした日本代表候補合宿で明らかになる。グランパス戦で後半終了間際から出場していた杉本が、合宿の時点でリーグ戦で1ゴールながら大抜擢されたからだ。覚醒といっても過言ではない今シーズンの活躍は、指揮官の目にも留まっているはずだ。
「今日も宏太君や曜一朗君がいいボールをあげてくれたし、僕は本当に合わせるだけでしたから。僕にボールを集めてくれる仲間に感謝しながら、ハードワークを含めて献身的なプレーを継続していきたい。そうすれば必ずチャンスが来るので、それらをしっかりと決め切る選手になっていきたい」
眩いスポットライトを浴びても、自らの立ち位置は見失わない。遠回りをした過程でセレッソへ帰依する思いをさらに強めた24歳は、空中戦の強さを含めた相手ゴール前における存在感と謙虚な姿勢をセレッソの最前線に加えながら、チームメイトの大半が経験したことのない優勝争いをけん引していく。
(取材・文:藤江直人)
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