過去に二度セレッソを離れた杉本。異例にも映る行き来の背景
後半途中からは布陣を3バックに変更。山村和也をトップ下から最終ラインに下げ、リスクを排除する戦い方で4連勝をマーク。連続不敗試合も「9」に、ホーム不敗神話も「10」に伸ばして首位をキープし、誓い通りに試合後にみんなで笑った理由を、杉本は3月4日に埼玉スタジアムで行われた第2節に求めた。
「アウェイで個人的にもチーム的にもすごく悔しい思いをしたけど、あの試合からセレッソはよくなってきた。前回は監督が代わって、選手もちょっと入れ替わったなかで、チームの方向性というものがちょっと曖昧になっていた時期ではあったので。僕たちの強い気持ちが、前半のゴールにつながったと思う」
試合後の公式会見で、ユン監督をして「前後半を通して守備と攻撃の部分で何ひとつちゃんとできた部分がなかった」と言わしめた1‐3の完敗。あれから約4ヶ月半。セレッソがいかにして変わったのか、がわかるバロメーターがホームにレッズを迎えた一戦だった。
以来、喫した黒星は5月6日のレイソル戦だけしかない。そのレイソルにもホームでの再戦でしっかりと借りを返した。前半に先制された悪い流れを一掃したのは、右コーナーキックからのこぼれ球を泥臭く押し込んで同点とした杉本だった。
今シーズンは全19試合にワントップとして先発。ゴール数も自身初の2桁に乗せてチームをけん引しているが、J2の舞台でチームトップとなる14ゴールをあげた昨シーズンから、ひと皮むけたというオーラを漂わせていた。
中学生時代からセレッソで育ってきた杉本は過去に二度、別のチームでプレーしている。最初は2012シーズンの序盤。ロンドン五輪出場を目指して出場機会を増やし、かつ1チームから最大3人選出という規制の適用外となるために、J2東京ヴェルディへ7月中旬まで期限付き移籍した。
次は2015シーズン。川崎フロンターレへ完全移籍し、セレッソに別れを告げたはずの杉本は1年後、再び完全移籍という形でJ1昇格を逃したセレッソに復帰している。異例にも映る行き来の背景にある杉本の思いを、セレッソの玉田稔代表取締役社長はこう慮る。
「隣の芝生(は青く見える)じゃないですけど、いろいろと思うところがあって最初は出て行ったと思うんですね。ただ、やっぱり『自分がセレッソをJ1に上げる』という気持ちになってくれたと聞きました。強化部のほうにも(杉本)健勇が戻ってきたがっている、という情報が入ってきたので」