レッズの戦意を喪失させる電光石火の2ゴール
今月2日のFC東京戦、8日の柏レイソル戦、そして12日のアルビレックス新潟との天皇杯3回戦。すべて先制されながら逆転勝利をあげてきた勝負強さは、メンタル面の変化と決して無関係ではないだろう。
もっとも、結果には満足できても、先制を許す試合内容には首をかしげてきた。さらなる成長を求める貪欲な思いが、杉本の言う「必ず先にゴールを奪い取る」につながっている。
「最近は試合への入りが悪いから、僕たち攻撃陣が必ず先に点を取ろうと。特に(水沼)宏太君とは『絶対に最初のチャンスをねじ込もう』と話していたので、本当にその通りになりましたね」
言葉通りに、開始6分で試合が動いた。セレッソが獲得した右コーナーキックはGK西川周作に弾かれたが、セカンドボールを山口が拾い、中央のMFソウザに預ける。ソウザのパスは体を張ったMF柏木陽介に防がれたが、こぼれ球に水沼が反応する。
このとき、柏木、DF森脇良太、キャプテンのMF阿部勇樹が手をあげてオフサイドを主張。連動するようにレッズの選手たちも一瞬のエアポケットに陥った隙を見逃すはずがない。水沼が放ったグラウンダーのクロスを、ゴール正面でフリーになっていた杉本が右足で冷静にゴール左へ流し込んだ。
杉本の咆哮。大歓声で揺れるスタンド。レッズの選手たちが一気に浮き足立つ。わずか2分後には山口が敵陣で縦パスをカット。ショートカウンターから最後は柿谷が左サイドからあげたクロスを、再び杉本が今度は頭でねじ込んだ。
マークについたDF槙野智章と空中で激しく競り合い、放ったシュートは直後に槙野の頭にもヒット。それでも「目の前の相手に絶対に負けない」なる執念が上回った。コースを変えたシュートはそれでも枠をしっかりとらえ、西川をあざ笑うかのようにゴール左に突き刺さった。
レッズの戦意を萎えさせる電光石火の2ゴール。しかも、自身初体験となるリーグ戦で3試合連続ゴールを達成しても杉本は満足していなかった。
「あまりにも早い時間に点を取ったから、ハットトリックを達成したいと思ってしまって。欲が出すぎて周りが見えなくなっていたのが今日の課題。もっと冷静に判断してパスを出せば、味方のゴールになっていたシーンもあった。そこは修正していきたい」
右足からのシュートが前半9分に右ポストを叩き、同34分には西川の真正面をつき、後半18分にはダイビングヘッドが右ポストをかすめた。それでも、反省の弁を優先させた杉本の背中に引っ張られるように山口、DF丸橋祐介がゴールを叩き込み、大量4ゴールを奪った前半の段階でほぼ勝負を決めた。