戦い方の土台。「目の前の相手に絶対に負けない」
目の前の相手に絶対に負けない。必ず先にゴールを奪い取る。そして、最後には笑う。セレッソ大阪のエースストライカー、杉本健勇は3つの誓いを胸に秘めながら、試合開始を告げるホイッスルを待った。
ホームのヤンマースタジアム長居に浦和レッズを迎えた22日の大一番。レッズが来月15日のスルガ銀行チャンピオンシップに出場する関係で、直前の同13日に開催されるJ1第22節がひとつだけ、中断期間中の「サマーブレイク」に前倒しされた90分間で、セレッソが首位を走る理由をこれでもかと見せつけた。
ワントップで起用された杉本が自らに言い聞かせていた「目の前の相手に絶対に負けない」は、今シーズンから指揮を執るユン・ジョンファン監督が厳命している戦い方の土台でもある。
「今日の試合を見てもらったらわかると思いますけど、目の前の相手に絶対に負けへんという気持ちが、僕たちのほうが上だったと思う。走る部分を含めて、そういう勝負というものを監督はすごく大切にしていますし、自分たちも大切にしている。そこがいまのセレッソの強みなんじゃないかと」
まずは1対1の局地戦を制し続ける。そのために開幕前のキャンプでは午前6時台の早朝を含めて、3部練習を課されることも珍しくないハードスケジュールのなかで、体力だけでなくメンタル面も鍛え抜いた。
サガン鳥栖時代にも同じアプローチでチームを成長させたユン監督は、当時の愛弟子で、今シーズンから期限付き移籍でFC東京から加わったMF水沼宏太と話し合いの場をもっている。
「ユン監督のやりたいことや、いままでのセレッソの緩い感じをみんなに伝える役になってほしいと言われました。ただ、ちゃんとやろうとなったときに、しっかりとできる選手がウチにはそろっている。いまの結果が出るのも、必然なのかなと思っています」
ハリルジャパンの常連であるMF山口蛍やMF清武弘嗣、元代表でキャプテンのFW柿谷曜一朗、そしてロンドン五輪代表に最年少の20歳で選出された杉本。選手個々が高い能力を擁しながら、チームとなると「甘さ」や「緩さ」が顔をのぞかせてきたセレッソが、指揮官の厳しさを触媒として変貌を遂げた。