モウリーニョ体制1年目。手堅いサッカーでEL制覇
総合評価:C
(ジョゼ・)モウリーニョ監督は今までのキャリアを振り返ると2シーズン目に大きな結果を残す監督です。そういう意味では新しいクラブを率いて1シーズン目で、怪我人が多いながらも手堅い戦いでリーグカップを獲り、終盤はリーグ戦を捨ててでも照準を合わせてELもしっかり獲ったことは評価されるべき結果だと思います。
サッカー的には他のクラブと比較して決して攻撃的だというものではありませんでしたし、基本的には「個」で打開する、バランスを崩してまで攻撃するようなところはありませんでした。そういう意味では「ビッグ6」の中では最も魅力的には見えないサッカーだとは思います。
ただしモウリーニョ監督が何を哲学として持っているのかを考えれば、ある意味それは普通のことだとも言えますし、全てのチームが攻撃的に振る舞う必要はないと考えています。
例えばチェルシーに2-0で勝った試合(第33節 2-0で勝利)のように変則的なマンツーマンディフェンスをいくつかの試合では使いました。マンツーマンでの守備は1対1での強さがベースとなる戦術です。どんなスタイルのサッカーにおいても当たり前に個の力は必要とされますが、モウリーニョ監督のサッカーには特にそれが求められるのではないでしょうか。
昨シーズンのマンチェスター・ユナイテッドには最終ラインの選手に多く怪我人が出ました。スプリントやジャンプをする際には大きな出力が必要となりますし、運動量は多くなくてもゴール近くのエリアでは一瞬で物事が決するためにハイパワーを必要としますから、そういったことがきっかけでDFの怪我が多くなったのかもしれません。
ただ、負傷離脱する選手が多かったと思う一方、守備陣の中に「この選手が軸だ」という選手が果たして存在していたのかどうか。(マルコス・)ロホや(フィル・)ジョーンズには安定感に欠けるところがあり、かつては期待の若手だった(クリス・)スモーリングもやや停滞したところから抜け出せずにいるように見えます。
そのような守備陣の中でGKの(ダビド・)デ・ヘアは昨シーズンも素晴らしいパフォーマンスを見せましたし、数字を見ても失点数は少なかったです(29失点はリーグ2番目の少なさ)。というところで見ると、昨シーズンのマンチェスター・ユナイテッドのサッカーは、変化に富んでいて見ている人がワクワクするような要素は少なかったと思いますが、一方で守備は安定していましたし、リアリストであるモウリーニョ監督らしいチームだったと言えます。