ベルマーレに抱いていた畏敬の念
ベルマーレには畏敬の念を抱いていた。走る。とにかく走る。球際の攻防では執念を前面に押し出してくる。怒涛のごとく前へ、前へとプレッシャーもかけてくる。敵として対峙した2015、2016シーズン。アグレッシブさに辟易としながら、すべてが自分に足りないものだと感じてもいた。
曹監督のもとで育まれてきた「湘南スタイル」を、自分の体にも脈打たせることができたら――。自分が絶対に変われるという確信を抱いたとき、J2の舞台でプレーすることへのちょっとした抵抗感は、いつしか期待へと変わっていた。
曹監督が課す練習は質、量ともに実戦さながらのハードさで知られ、新加入の選手たちのほとんどが最初は圧倒される。2014シーズンの夏に横浜F・マリノスから期限付き移籍したMF熊谷アンドリュー(現ジェフユナイテッド千葉)は、合流初日の練習を終えてこんな言葉を残している。
「このチームはサッカーではなくて、格闘技をやっているのかと思った」
シーズン開幕へ向けた練習でも然り。始動日からいきなりエンジン全開のパフォーマンスが求められる。連日のように二部練習が組まれていたなかで行われた、1月中旬の新体制発表会見。自己紹介の順番が回ってきたFW野田隆之介(前名古屋グランパス)は、苦笑いしながらこんな断りを入れている。
「すみません。全身が筋肉痛なので、座ったままでしゃべらせていただきます」
秋野にとっても初体験となる濃密な日々。それでも「期待以上の練習量で毎日が充実しています」と、努めてポジティブにとらえていた。猛練習を歓迎するスタンスは、半年近くがたったいまも変わらない。
「それを求めてここにやってきたので。ハードなところもありますけど、それが自分の身になっていると実感しているので。厳しいですけど、苦しくはないです」