バイエルン戦で見せつけられた「違い」
今のサッカーは戦術や戦略の部分、選手の配置などいろいろなことを考える監督が増えました。より戦術・戦略面が重要となってきた今のサッカーにおいては、選手のクオリティだけで解決できないことはやはりあります。そういう視点で見るとアーセナルというチームは様々な判断を選手に委ねている割合が高いのではないかと見ています。
途中退場があったので数字通りに受け取れない部分もあるかもしれませんが、CLベスト16でのバイエルン戦は2試合通して見た時に「これは敵わないな」と強烈に印象づけられました。
単純に所属している選手たちを見比べると、明らかにバイエルンの選手たちのレベルが高い。なおかつバイエルンは素晴らしく組織的で、非常に高い攻撃力も持っているチームです。そういったチームを相手にしたアーセナルは、これといった特別な策を講じることなく、2戦通じて完膚なきまでに叩きのめされてしまいました。
戦力面で自分たちを上回る相手と闘う時には、いかにして相手の良さを消しつつ自分たちの良さを出していくかという部分が必要になってくると思います。
そういう視点で見れば、2ndレグでは思い切ってシステムを4-3-3にして逆転を目指しはしましたが、それもオプションというよりは1stレグの結果を受けて攻めに出たもので、残念ながら付け焼刃な感は否めませんでした。
ヴェンゲル監督はオーソドックスな形に選手を乗せて「さあ楽しもう」と、伸び伸びプレーさせることで美しいサッカーをと考えるタイプの監督だと思いますし、選手に対して試合ごとに特別に役割を与えるとか、配置を少し変えるとか、スタートから10分は徹底的にプレッシングにいかせるとか、そういった視点でゲームをプランニングするタイプの監督ではないと思います。
となると選手のモチベージョンや個々の技術・判断力ベースで戦うことが多くなります。
しかしサッカーは選手だけで解決出来ないことが多く存在するスポーツですから、そういう意味では当然ピッチの外の人間の役割も大きくなると思います。
そうした時にヴェンゲル監督の持つピッチ上に意図的に有利な状況を作り出す、または難しくなった状況を改善する策を打ち出すという戦術・戦略家としての力は「ビッグ6」の監督の中では一番弱いのかなという見方をしています。