最後のピースは誰か。得点力不足解消のカギ
となれば、クラブ上層部はパズルの最後のワンピースの獲得に集中することになる。昨季のユナイテッドは得点力が圧倒的に不足し、リーグ戦での総得点はわずか54。
勝ちきれない試合が多かっただけに、ウィングはストライカーと並んで補強がマストとなる重要なポジションだ。その最有力候補に挙げられているのが、インテルのサイドアタッカー、イバン・ペリシッチである。
ペリシッチは、モウリーニョ戦術の肝といえる純粋なウィンガータイプの選手だ。昨季はマーカス・ラッシュフォード、マルシアル、ジェス・リンガード、マタなどがワイドエリアの攻撃的ポジションで起用されたが、リンガード以外の選手にとってはベストポジションとは言い難い。
加えて、まだ若いリンガードには粗さが目立ち、消える時間が長い。クロスの精度も改善が必要で、まだまだ全幅の信頼は寄せられない。一方、28歳のペリシッチは既存のチームには見当たらないタイプで、モウリーニョサッカーに最適の存在といっても過言ではない。
オフェンス面ではスピーディーなトランジションから一気にファイナルサードへ駆け上がる速さを持ち、クロスの精度も高い。昨季の11得点8アシストが示すように、決定力も備えている。また同監督が好むハードワークをこなすタイプで、素早くトラックバックして敵の攻撃を防ぐ泥臭い仕事もいとわないだけに、ウィングバックとしても機能できるはずだ。
先日、同監督は「最低でももう一人は補強したい」と話していたばかりだが、近日中にマティッチとペリシッチの両者の交渉をまとめ上げてもおかしくはない状況だ。今月上旬に「移籍市場での動きが少ない」として、指揮官がフラストレーションを募らせていたことを考えれば、状況は大きく変化しているといえるだろう。
またルカク獲得と並行して、ユナイテッドで13シーズンを過ごし、クラブ最多得点記録保持者でもあるウェイン・ルーニーの放出が決まり、数年前には「低迷するユナイテッドの唯一の光」と崇められたアドナン・ヤヌザイもレアル・ソシエダへと去っていった。今後も同監督が必要としない選手は放出されていき、人員整備は進むはずだ。
優勝請負人が率いる、モウリーニョ・ユナイテッドの2シーズン目。着々と自身の目指すチーム作りを進めるポルトガル指揮官の目には、「優勝」の二文字しか見えていない。
(取材・文:Kozo Matsuzawa / 松澤浩三【イングランド】)
【了】