MVPは精神的支柱と絶対的守護神
ーーアトレティコにとって昨季のターニングポイントは、やはり全く勝てなくなってしまった10月から12月頭にかけてでしょうか。
倉敷 その後はほとんど負けていないんですよ。よくやりくりしていたなと思います。“Partido a partido”(編注:日本語訳すると「試合から試合へ」の意味になる、シメオネが頻繁に使用する表現)という言葉があって、それはシメオネに言わせると人生なんだと。目の前のフットボールを生きていくということは、すなわち人生を生きていくということだから、日々を大事に生きていけば明日は必ずやってくるよ、という彼の考え方が浸透したんでしょうね。
ルイス・アラゴネスの時代からアトレティコに伝わっているアイデンティティを、かつてバルサでペップが掘り起こしたように、シメオネが選手たちに示した。誰よりもサッカー選手、あるいはサッカーチームの監督のサイクルということを疑っていたシメオネが、もしかしたら自分の中で何か結論を見つけたのかなというシーズンですね。
玉乃 サッカー自体に新しさはあまりないです。今まで通り。昨季はより攻撃的にいこうとして失点が増えてしまったと思うんです。目標はCL優勝とリーガのタイトルを獲ることなんで、やるしかないですよね。アトレティコは1部に残るのが精一杯のクラブだったのに、今は課せられている任務が大きすぎて本当に大変だと思います。他のビッグクラブに比べてそんなに予算があるわけではないですし。
倉敷 シメオネはいつも「自分たちが獲得していないタイトルがあることがモチベージョンなんだ」という方向にもっていきますよね。勝てないことが次の目標に我々を奮い立たせると。
ーーそんなアトレティコから昨季のMVPを選ぶとしたら誰になるでしょうか。
玉乃 ガビですね。ほぼ怪我もなく中盤をタフに支えました。一昨季のCL決勝のガビは試合を通してNo.1だったと思います。めちゃくちゃタフでしたね、あんなにタフだったんだと改めて気づかされるくらい。そのタフさが昨季に入っても続いていましたよね。チームの精神的支柱という意味でもMVPに挙げたいです。
倉敷 僕は断然(ヤン・)オブラクですね。2年連続サモーラ賞ですよ。彼の安定感なくしてシメオネのサッカーはない。アトレティコはいいGKをどんなに失っても、必ずいいGKを見つけてくるのはすごいと思いますね。ここ数年はバルサも見習った方がいいんじゃないのか、というくらい(笑)