W杯出場に向けたリスク。それでも好奇心の向くままに
もちろん競争は激しくなることが予想され、本田にもポジションは約束されていないはず。ただ、本田自身も「試合出ることを優先して移籍をしたってことが過去にないので、別に。自分が面白い、自分が成長できる、刺激的なところにつねに挑戦心を持って行っている」と語っており、むしろ厳しい環境を受け入れることを前提とした移籍だろう。
世界への挑戦権、レベルの高い中盤、新鮮なプレー環境といったことに加えて、もうひとつ本田を刺激しうるものがパチューカにはある。パチューカは中南米屈指の大学都市であり、通称“サッカー大学”と言われる教育施設を有しているのだ。ここでは競技としてのサッカーだけでなく、経営学やマーケティング、栄養学といったサッカーをはじめとしたスポーツに関連するものを全て学ぶことができる。
これまでの本田の話からの想像ではあるが、もしかしたらこれこそが他のリーグやクラブにまして、本田の好奇心を刺激した大きな要因かもしれない。何はともあれ全く新しい環境での挑戦だけに、純粋なレベルの高さだけでない困難が本田を待っているかもしれない。当然ながらW杯イヤーに向けてノーリスクではないだろう。
しかし、基本メキシコ人は明るい性格で、外国人でも受け入れてくれる文化なだけに、不安より期待とワクワク感の方がはるかに大きい。これまで何度となくメキシコに足を運んだ筆者としても、本田圭佑という日本サッカーを代表するサムライの挑戦を通じて、メキシコと日本の距離がより近くなることを楽しみにしている。
(文:河治良幸)
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