戦術論に関心を持ったきっかけ。「フットボールが下手だった」
――そもそも君が、戦術論に関心を持つようになったきっかけは?
「多分、最初の要因として大きかったのは、ものすごくフットボールが下手だったことだと思う。僕は子供の頃からフットボールが大好きだったけど、残念ながらプレイヤーとしては、お世辞にもうまいとは言えなかったんだ」
――自分で言うほど下手だったかどうかはともかく、君がフットボールを見るのもやるのも好きだったことは、僕もよく知っている。2004年頃に君と仕事をし始めた頃、草サッカーをしていて顔にボールが思いっきり当たり、鼻が曲がったとか元に戻ったとかいう話をしたのを覚えているぐらいだから(笑)。
「よく覚えているね(笑)。それはともかく、フットボールが下手だったら、なんとかしてうまくなりたいと思うようになるだろう? だから6歳か7歳の頃に、『レディバード・ブックス』を買ってみたんだ。『レディバード・ブックス』はすごく良質な本だけど、たまたまその中の一冊が、フットボールについて解説していたからね」
――イギリスではおなじみの児童書だね。読んでみてどうだった?
「正直な話をすると、戦術が解説されている箇所は2ページしかなくて、書いてある内容も『これが4-4-2です、これが4-3-3です』といったような、すごく初歩的なものだった。
でも、その手のシステムの話に、なぜか興味を惹かれたのを覚えている。子供の頃に関していうと、『サブティオ』にも影響を受けたかな。サブティオは知っている?」
――もちろん。今も書庫か実家のどっかにあるんじゃないかな。
「なるほどね。僕の場合は、子供の頃に父とサブティオよくやったんだけど、あれで遊んでいると、ベーシックな戦術のようなものを考えるようになるじゃない?」
――たしかに。ビリヤードと同じで、次にどこにボールを弾けばいいかを考えるようになる。
「僕の場合は西ドイツの代表チームを選んで、父さんと試合をやったんだ。サブティオを通じて、全体を俯瞰してみるような発想が、なんとなく身についていったのかなという気はするね」