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世界的サッカー「戦術論者」を育んだ英国文化。気鋭のジャーナリスト、知られざるルーツ

text by 編集部 photo by Getty Images

“戦術ブーム”の高まりが追い風に

日本では2010年に発売された『サッカー戦術の歴史 2-3-5から4-6-0へ』
日本では2010年に発売された『サッカー戦術の歴史 2-3-5から4-6-0へ』(筑摩書房)

――でも実際には、世界的なベストセラーになっている。出版社から報告を受けたときには驚いた?

「そりゃあ、あんなに売れたことに対してはびっくりしたよ。僕自身はまったく予想していなかったからね。

 ただ、さっきも言ったように、自分が携わった本の中で、一番いい作品になることはわかっていた。もちろん僕は将来的にもっといい本を書いていきたいから、あの作品が自分のキャリアのクライマックスになるのは困る(笑)。でも、いいものに仕上がったのは嬉しかったね。ウィリアムズ・ヒルの最終選考に選ばれたのも、ものすごく栄誉なことだったし」

――あの本は是非、翻訳を手がけたかった。君からはドラフト(草稿)をかなり早い段階でもらっていたし、ちょうどロンドンで足を折った後で、自宅で時間を過ごさざるを得なかったから、原稿も一気に読み終えることができた。

 で、これは自分がやるしかないと思ってね。昔から懇意にしていた編集者もサポートしてくれたから、意気込んで某出版社に企画書を持ち込んだら、にべもなく却下(苦笑)。まあ、世の中そんなものだけど。

 個人的な話はさておいても、あの本は戦術論に関心がなかった人たちの目も、戦術論に向けさせたのは事実だと思う。日本では、君の本の内容を参考にしたような解説書さえ出版された印象がある。自分の作品が与えた影響の大きさについてはどう思う? 戦術論議自体を活性化させるための、一つの触媒になったという認識は?

「そう言ってもらえるのは嬉しいけど、あの本が反響を呼んだのは、巷でフットボールの戦術論そのものに対する関心が高まっていた側面も大きいと思う。新聞でも戦術の記事がものすごく増えてきていたし、インターネットでも、いろんな人が戦術について書くようになってきていたからね。ある意味、追い風が吹いていたし、その追い風にうまく乗れたのはラッキーだった」

――君自身が、新しい流れを作った側面もあるんじゃないだろうか?

「いや、それは違う。僕はあくまでも、大きなブームの一部分を担ったに過ぎない。本当にタイミングが良かったんだ。

 たしかに僕の本は、あいまいだった戦術用語を改めてきちんと定義したと思う。でも戦術や戦術の歴史に対する関心は、すでにサッカーファンの間で高まり始めていたんだよ」

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