露呈したフロント力の差…負の連鎖を断ち切れるか
玉乃 最後の最後で難しい試合をモノにできる力は備わっていなかったですよね。結局アンドレス・イニエスタが先発していない4試合はすべて負けていますから。彼の調子が悪かったり、怪我をしたりしている時に負けて、結局イニエスタを途中で入れざるを得ない。本当は使いたくなかったんでしょうけど、あのクラシコ(編注:リーガ第14節 ホームで1-1のドロー。イニエスタは60分から途中出場)も然りですよ。それだけ中盤には苦戦しましたね。日本にはバルセロニスタが多いと思うんですけど、そういう人でもデニス・スアレスやアンドレ・ゴメスはピンとこないんじゃないかな。
倉敷 シャビがいなくなった時点で苦しくなっていました。イニエスタという類まれな能力を持った選手にも、やはり怪我があって、年齢的な衰えもあって、恐らくキャリアの終焉を感じたシーズンだったと思うんですよね。バルサはインテリオール(編注:中盤で守備から攻撃の組み立てまで幅広い役割をこなす選手に対するスペインでの呼称)のポジションを補強しない限りはもうどうしようもなくて、これはもっとハッキリ言うとマドリーとのフロントの力の差です。
マドリーはちゃんといい選手を獲っていて、他に貸し出している貯金まである。バルサに貯金はほぼないんです。レンタルから戻してきた選手にしたって、デニス・スアレスは頑張ったけれど、最終的にルイス・エンリケの信頼を得るまではいかなかったと思います。それだけバルセロナのサッカーは難しい形があるのかもしれないけど、馴染むのに時間がかかってしまう以上ああいうことが起こりえます。センターバックにしてもここ数年の間に何人も獲り損なってきた負の歴史があるわけです。獲ろうと思ったらみんなPSGに行ってしまった、マドリーに行ってしまった…その連鎖に陥ったフロントの実力不足が出たのが昨季のバルサだったと思います。
ーーそういう意味では昨季獲得したサミュエル・ウンティティは久しぶりに当たったセンターバックの補強でした。
倉敷 ウンティティだけじゃないですか。彼だけはあんなにあっさり馴染むとは思わなかった。最後は負けてしまいましたが、出場しただけで負けないという「タリズマン(お守り)」的なものも持っていた特別な選手でした。今後は彼とジェラール・ピケ中心にやっていくんだとは思います。それでもディフェンスの補強は急務でしょうね。
玉乃 ペップとの差が出ましたよね。ペップにはペドロやセルヒオ・ブスケッツのように、Bチームの選手をいきなり使って育てましたけど、ルイス・エンリケは外からかき集めてきた感じがありました。ペップの方がバルサのアイデンティティが身に染みているというか、クラブの象徴はルイス・エンリケではなくペップなんだなと思いましたね。ルイス・エンリケが就任したときはペップの貯金があったんじゃないかな。