「さすがL・エンリケ」。だがレアルとの差は大きく…
ーー今回はバルセロナの昨季についてお伺いしたいと思います。コパ・デル・レイこそ優勝しましたが、ルイス・エンリケ監督最後のシーズンはリーグ優勝をレアル・マドリーに譲り、CLでもユベントスに力の差を見せつけられた印象でした。
玉乃 よくあそこまでマドリーと並んで優勝争いできたなというくらい。まず補強が当たらなかったのと、前線への依存度が高くなっていました。それだけ前線の3人がすごいんだなというのは改めて痛感した部分ではありますよね。中盤の構成力でマドリーと比較したら10対5くらいの力の差があったと思います。メッシ、ネイマール、スアレスの3人がすごすぎて、それがルイス・エンリケ監督にとって悩みの種になっていましたね。
ーー過密日程になってもMSNは外せなくなっていましたね。
玉乃 結局パコ・アルカセルが出てきても物足りなさが残り、アルダ・トゥランも序盤は良かったけれども、目の肥えたお客さんはMSNと比較してしまうので難しさはあったと思います。バルサにとっては難しいシーズンでした。マドリーが突き放すと予想していたので、あれでも最後までもつれたのは、サッカーって面白いなと思いましたね。
ーー倉敷さんは昨季のバルサをどのように見ていましたか?
倉敷 コパ・デル・レイの3連覇、さすがルイス・エンリケと思いました。昨季はマドリーが優勝したこともあってバルセロニスタにとって忘れてしまいたいシーズンだと思いますが、絶対に忘れない試合が2つだけありました。ひとつはCLのパリ・サンジェルマンとのゲームで(編注:アウェイでの1stレグは0-4で敗戦したが、ホームに戻った2ndレグに6-1で勝利し大逆転でのベスト8進出を決めた)、一生語り継ぐものになるでしょう。もうひとつはサンティアゴ・ベルナベウでマドリーを倒したあの試合(編注:リーガ第33節 3-2で勝利。メッシが劇的な決勝ゴールを挙げた)。バルセロニスタは昨季について、もうこの話しかしないと思います。この2試合だけでお釣りがくる。それがやっぱり彼らの生き方というか、生活の一部というか、とにかく忘れてしまいたいシーズンでしょう。
最後まで優勝争いをしたけども、勝てないシーズンはあのクラスのチームになると意味がないですよね。「歴史を作れたのは私のキャリアにとって幸せなことだったと思う」とルイス・エンリケが語るように、大きな試合をできたことは評価していいと思います。特にMSNの中で最も若いネイマールにとって思い出深い試合がひとつできたということ、それからメッシにとってもものすごい試合を作ることができたというのは、彼らの歴史の中での大きな出来事だったんだろうと。
でも、それくらいしかなかった。マドリーと比べて中盤の構成力は完全に落ちてしまった。マドリーがなぜ強かったのかというと、うまい選手が11人以上いたからです。あのレベルでうまい選手が11人以上いたら、どんなことだってできる。例えばヨハン・クライフが指揮したら何をするんだろうというくらい興味深いレベルの高い選手が少なくとも15人はいた。世界にそんなチームないですよ。バルセロナは最大でも11人しかいなかった。はっきり言ってこの差ですね。