「本当に強かった。今後を応援したくなりました」(鄭大世)
勝者の言葉には聞こえなかった。2-0の完封劇でベスト16進出を決めた直後の取材エリア。先発フル出場した清水エスパルスのキャプテン、FW鄭大世はいわきFCを称えずにはいられなかった。
「敵ながらあっぱれでしょう。いい時間帯にああいう形で点を取れなかったら、正直、どうなっていたか。いやぁ、いいサッカーでした。本当に強かった。今後を応援したくなりました」
キックオフからわずか48秒で試合は動いた。左サイドからDF二見宏志が投じたロングスローを、187センチの長身FW長谷川悠がバックヘッドを一閃。反対側のゴールネットへ流し込んで先制した。
2回戦でJ1の北海道コンサドーレ札幌を、延長戦に末に5-2で撃破。痛快無比なジャイアントキリングを達成し、全国区の注目度を集めたアマチュアクラブの雄もさすがに浮き足立ったのか。
3分に長谷川、5分に鄭大世、9分にはMFミッチェル・デュークに制空権を握られ、決定的なシュートを放たれる。しかし、高さで劣勢に立たされる展開は織り込み済みだったと田村雄三監督は振り返る。
「こればかりは仕方ないと試合前から選手たちには話していましたし、だからと言って引いて守ってカウンターやセットプレーで点を取っても何も残らない。何点取られても自分たちのサッカーをやろうと」
いわきFCが目指すサッカーとは、鍛え抜かれたフィジカルの強さを生かしながら、ボールを前へ、前へとしっかりつないでいくスタイル。そして、時間の経過とともに選手たちは落ち着きを取り戻す。