MVPは「憎みきれないろくでなし」なセルヒオ・ラモス
ーーマドリーのシーズンMVPを挙げるとすれば、誰になるでしょうか。
倉敷 僕はセルヒオ・ラモス。
玉乃 僕もセルヒオ・ラモスと言いたいんですけど、一緒でいいですか(笑)
ーーセルヒオ・ラモスをMVPとした理由を教えてください。
倉敷 彼はまず諦めない選手だということがひとつ。それから昨季のマドリーはリーグ戦においてコーナーキックからの失点がひとつもないという特殊なチームなんですね。それはやっぱりセルヒオ・ラモスによるところがすごく大きいと思います。彼にとって本当にいろいろな面でキャリア最高の1年でした。サンチェス・ビスファン(セルヒオ・ラモスの古巣セビージャの本拠地)での嫌われ方もすごい。それから退場の記録を更新してしまう。セルヒオ・ラモスは本当に、沢田研二さんではないですけれども、「憎みきれないろくでなし」という感じで、相手からもしっかり嫌われつつチームを勝たせる最高の選手だと思いますよ。
玉乃 あのセビージャのホームで、あれだけブーイング食らってもチップキックをやりますからね。どういうメンタリティなんだという…意味がわからないですよ。それでゴールを決めた後のパフォーマンスもやってしまうんですから。あのスタジアムでそういうことするのは結構シャレにならないと思うんですけどね。
倉敷 あそこでやったら命の危険を感じるくらいだよね。
玉乃 家族のことをいろいろ言われたりだとか、メンタル的にシメオネに通じるものがあるんじゃないかな。負けても絶対に負けを認めない。本当にタチが悪いと思いますよ。
倉敷 イスコも昨季は本当に良かったですね。古いタイプの10番はいらないと言われていたところから、いろいろなポジションができるようになって、最終的にCLを勝つうえで欠かせない存在になっていました。しかもすごく小柄でスペイン人が大好きなタイプ。僕は先日マラガへ行って彼の故郷でゲームを見ていましたが、本当に愛されていました。マラガの人たちはイスコのことが大好きで、それはマドリディスタにとっても同じなんですね。彼はまさにスペイン人選手そのものなんですよ。そういう選手が一番活躍してくれた。
少し前の銀河系軍団の時に、「ジダンネス」と「パボンネス」という言葉がありました(編注:2000年代前半、マドリーのフロレンティーノ・ペレス会長はジダンら他チームから加入したスター選手を「ジダンネス」、フラシスコ・パボンら下部組織出身の若手選手のことを「パボネス」と呼び、両方を組み合わせたチーム作りを目指した)。まさに「ジダンネス」だった人間が、監督になって「パボンネス」化して、地元出身の選手をこれだけピックアップして使い続けて、最後は中心になって終わったなんて、こんなに美しいストーリーはないじゃないですか。スペイン人のセルヒオ・ラモスとイスコは昨季を象徴するマドリーの選手だったのではないかと思います。本当に良いシーズンでしたね。