「あそこまでうまい監督は、選手からも尊敬される」(倉敷)
ーー彼らは無敗記録を続けることや史上初のCL連覇をプレッシャーに感じることはないのでしょうか?
倉敷 プレッシャーと上手に向き合っていた気はしますね。マドリーが先制されて負けたゲームはほとんどないんじゃないかな。逆転勝ちや追いつくゲームがすごく多い印象で、ジダンは誰かに責任を負わせることを決してしない人だった。大幅なローテーションで負ける理由を、ジダンは初めから監督の問題だと示していた気もします。
そうすると選手がプレッシャーを感じるゲームは少なかった気がしますけどね。「今日はC・ロナウドがいないから」とか、「ベイルが大怪我してしばらくいないから」とか、言い訳できる要素がたくさんあった状態で、記録をしゃにむに作った感じはしないですよね。だから燃え尽きることもないだろうし、そういう意味で本当に強いですよ。
途中から出てくることの多かったアルバロ・モラタと、開幕当初はでレギュラーではなかったイスコの2人がシーズンハイの記録作っているわけですから。モラタなんか本当にすごいですよ。出場している時間から得点率を計算したら、役割は違うとしても確実に(カリム・)ベンゼマより上ですよね。そういうとっておきのジョーカーを持っていて、ジダンは彼らともしっかりコミュニケーションをとれていました。あそこまでうまい監督は、選手からも尊敬されるでしょうし、マドリーの監督になれる人は本当に限られているんだろうなと思いましたよね。
玉乃 たぶんジダンからすると、C・ロナウドも「そこまでの選手ではない」と思っているんじゃないかなと。だから本当に困った時は特にC・ロナウド頼みにしないで、マルセロやルカス・バスケスをワイドに張らせて3-5-2にしてずっと放り込みをやっていたんですよ。そして極限まで押し込んで、最後にセルヒオ・ラモスがゴールを決めるようなことができたので、決してC・ロナウドに頼っていたシーズンではないと思うんですよね。
倉敷 シーズンを通しての精神的な柱としてセルヒオ・ラモスの存在は欠かすことができないですね。“Noventa y Ramos”、つまり「90分+ラモス」という言葉も生まれました。リスボンでのCL決勝の時(13/14シーズン)、僕は現地いましたけども、アトレティコがこのまま逃げ切ると思ったら93分にセルヒオ・ラモスが点を取って、そこで力尽きたアトレティコが無残に敗れていくのを悲しく中継していた覚えがあります。あのころからセルヒオ・ラモスはすごいですよ。90分を過ぎてからでも「まだ俺たちにはセルヒオ・ラモスがいる」という精神的に大きな支えだったんじゃないですかね。