智将の緻密なアプローチ。組織的な守備の構築
組織的な守備を構築させるためのロティーナ監督のアプローチは、井林によれば、微に入り細という表現がぴったりと当てはまるほど緻密だったという。
「隣や前後の選手との関係を常に意識したなかで、自分が取るポジションが決まってくる。いままではいかにして1対1で負けないとか、目の前の相手を潰すかということを意識していたんですけど、いまはチームとしてどこのポジションを守り、どのタイミングでそのポジションを崩していくかを考えさせられている」
たとえば、2月の沖縄キャンプ中には、川崎フロンターレとの練習試合を組んでいる。人もボールも絶え間なく動く独特のスタイルを相手に、ポジショニングの重要さを肌で感じさせることが狙いだった。
「川崎のように穴を突いてくるようなチームは相手をつり出して、そこにできたスペースにどんどん入ってくる。そういう攻撃をさせないためにも、それぞれのポジションをまずは守ることを徹底した。
そのうえで、シーズンに入った後は、対戦相手の攻撃陣が裏にどんどん来るスタイルなのか、足元にどんどんもらってコンビネーションで崩してくるスタイルなのかによって、自分たちが前からプレスをかけにいくのか、まずは後ろのケアをするのかという守り方を、毎週のように繰り返してきました」
井林の言葉を借りればチーム作りは第1段階を終えて、次なるステップへ突入しているのだろう。半年ほどの時間をかけて土台を完成させたうえに、状況や時間帯によって、個人の力や閃きで積極的にリスクを冒していく。流れを変える役割を託されている梶川は言う。
「堅いだけでは相手にも研究されますし、その意味ではリスクを冒していかないとゴールにもつながらないし、チームとしてもステップアップしない。だからと言ってむやみやたらに出ていくのではなくて、個人個人が機を見ながら考えてプレーしなければいけないと思っています」