2バックに近い4バック。明確なメッセージ
開幕へ向けた準備を進めながら、今シーズンから東京ヴェルディの指揮を執るスペイン人のミゲル・アンヘル・ロティーナ監督は、選手たちにこんな言葉をかけていた。
「シーズンが折り返すころには、もっと強い要求をしていく」
基本的には個人よりも組織。堅実な守備をベースに、リスクを冒さない戦い方で確実に勝ち点を積み重ねた結果として、セルタやエスパニョールといった中堅クラブをラ・リーガの上位に導いてきた。
60歳を迎えたばかりの智将によるアプローチは、ヴェルディにおいても変わらない。短い時間で守備組織を整備し、大分トリニータとの第2節からは破竹の5連勝をすべて完封で達成している。
だからこそ、ホームの味の素スタジアムにファジアーノ岡山を迎えた9日のJ2第22節で振るった采配は異彩を放った。くしくも指揮官が開幕から言及していた、長丁場のシーズンの後半戦初戦でもあった。
1点を追う後半26分。2枚目の交代カードとしてDF永田充に代えてFW高木大輔を投入し、最終ラインの形をそれまでの3バックから4バックに変えた。キャプテンのDF井林章は、ロティーナ監督からの明確なメッセージを感じていた。
「4バックというよりは2バックに近い感じでした。かなりリスクはありましたけど、それでも攻勢に出るという考えのもとで、ディフェンダーを一人削ったんだと」
それまでは左右のワイドだった安在和樹と安西幸輝が、左右を入れ替える形でサイドバックに配された。レフティーの安在が右サイドバックを務める。要は攻め上がってからクロスをあげるのではなく、中へ切れ込んでからのコンビネーションやミドルシュートが求められる。
左の安西も然り。必然的に両サイドバックは、まるでウイングのように高い位置を取る。井林が思わず苦笑いした2バックのもとで一気にプレッシャーを強めたヴェルディは、布陣変更から4分後に獲得した左コーナーキックを、DF平智弘が豪快に頭で決めて同点とした。