ボランチやCB、「守備の人」という固定観念
相手のゴールマウスに立つ守護神の一挙手一投足がよく見える。センターバックやボランチの息遣いや、ゴールに絡ませてなるものかという殺気も、90分間を通してひしひしと伝わってくる。
ボランチやセンターバックが主戦場だった昨シーズンまでとは180度異なる景色や感覚を、セレッソ大阪のトップ下として眩い存在感を放っている山村和也は心の底から楽しんでいる。
「実は個人的には攻撃するのが大好きなんですよ。なので、前線でプレーしているのはすごく楽しいけど、守備で入ったときもまた違った面白さを感じているので。今日みたいにしっかり抑えられると、やっぱり嬉しいですよね」
ホームのキンチョウスタジアムに柏レイソルを迎えた8日のJ1第18節。キックオフ前の時点で、2位のセレッソに対してレイソルは3位。上位への生き残りをかけた大一番で、山村のユーティリティー性が存分に発揮された。
トップ下で先発し、1点を追ってDF松田陸、キャプテンのFW柿谷曜一朗を同時にベンチへ下げた後半16分からは3トップの右へ。FW杉本健勇、MFソウザのゴールで逆転すると一転して3バックの右に下がり、レイソルが仕掛けてきたパワープレーを跳ね返し続けた。
ロンドン五輪出場をかけたアジア予選で、U‐22日本代表のキャプテンを務めた流通経済大学時代。即戦力の期待を背負って、2012シーズンから加入した鹿島アントラーズ時代。ロンドン五輪本大会を含めて、ボランチやセンターバックでプレーした山村は、いつしか「守備の人」という固定観念を抱かれていた。
出場機会を求めて、昨シーズンから完全移籍で加入したセレッソでも然り。チーム統括部長と監督を兼任する形で昨シーズンのJ2を戦い、今シーズンからは前者に専念している大熊清氏も「攻撃が上手いことはわかっていましたけど」と、苦笑いを浮かべながらこう続ける。
「彼をトップ下で使うことまでは、正直、考えたことがなかったし、練習でやらせたこともなかった。ボランチのソウザを、トップ下で使ったことはありましたけど」