ワントップを任され、蘇りつつある大学時代の感覚
快晴に恵まれた祝日という舞台もあって、2万5000人を超える大観衆で埋まった等々力陸上競技場のスタンドへ向かって、お立ち台に呼ばれた阿部は「やっと馴染めました!」と照れながら絶叫している。
「ファンやサポーターの方々が笑ってくれるかな、と思ったのもありますけど。ゴールシーンで馴染めたのは、ホンマに初めてだったので。チームにはずっと前から馴染めていますけどね」
ときにはすすんで笑いを取る関西人ならでは明るさで瞬く間にチームに溶け込み、ピッチのうえでもフィットした。5月以降の阿部が、リーグ戦8試合で7ゴールを量産しているのもうなずける。
そして、阿部のチャレンジ魂を中村や大島、小林といった日本代表経験者を擁するフロンターレの攻撃陣が後押しする。冒頭で記した「毎試合のようにいいパスが来る」は、以前に別の選手からも聞いたフレーズだ。
FW大久保嘉人(現FC東京)がヴィッセル神戸から加入した2013シーズン。中村や大島が何度もおぜん立てしてくれるチャンスに、時間の経過とともにストライカーの本能が呼び覚まされていった。
その結果として、前人未踏の3シーズン連続の得点王獲得が導かれる。同じ図式が阿部にも当てはまる。大学時代の感覚が、ワントップを任されることの多いフロンターレで鮮やかに蘇りつつある。
「ガンバのときよりはポジションが前なので、ゴールチャンスが単純に増えたのもひとつの要因かと。まさかこのポジションをやるとは思ってもいなかったですけど、監督が使ってくれていますし、僕も信頼に応えたい。新たにいろいろな引き出しを身につけるチャンスやと思っているので」
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