あまりにも激烈だった喧噪
クルブ・デポルティボ・テネリフェは、本拠地としている土地に一致したチームであるように感じられる。この楽園のような島に主要な都市部はせいぜい3つか4つ程度しか存在せず、あとは静けさと自然と伝統で占められている。
だが見誤ってはならない。この島のサッカーチームは、様々な社会的・メディア的・感情的・歴史的要素を複合させ、欧州大陸部から遠く離れた小さな土地を代表するだけではない何らかの存在であるかのようだ。
クルブ・デポルティボ・テネリフェとは、巨大な感情を生み出し、メディアの並々ならぬ注目を引きつけ、それ故に大西洋に漂う一つの島に通常よりはるかに大きな重圧をもたらす。それらの要素を包含する団体だ。
そのテネリフェの島に、テネリフェのクラブに、一人の日本人が流れ着いたのが1月のことだった。強大なる欧州王者の土台を揺るがし、一躍メディアの寵児となった日本人だった。柴崎岳は24歳にして初めて旅立ち、その内向的な性格にとってはあまりにも激烈な喧騒の中へと飛び込んできた。
数十万ものツイートがその若者の名をつぶやき、数千ものウェブページや新聞紙面がその写真を掲載する中で、故郷から1万km以上離れた地で不確かな未来へと足を踏み出した。
だが最悪なことに、それほどの冒険に乗り出したのは、世界最高の選手たちと一緒にプレーするためだったわけでもない。
面積わずか2千平方キロメートル、人口は母国の127分の1という大西洋の小さな島で、ガクは2部リーグのチームに加入。ホテルの一室で孤独に過ごし、地元の言葉を一言も話すことも理解することもできず、それでいて一挙手一投足を数百のカメラや記者たちに追われ続けた。