真の意味で「長崎のプロクラブ」になるために
例えば、諫早市から土地の提供を受け、社団が建設し所有権を有する「諫早市サッカー場」のクラブハウスについても、体制変更後の社団の方向性や状況が不明なままで、当初3月にはクラブハウスにトップチームが入るとされていた計画は延期されたままである。
社団は3月の服部順一氏の代表理事辞任後、長崎県サッカー協会会長でもある、小嶺忠敏氏が代表理事に就任したが、相次ぐ理事の交代や、行政との情報共有や連携不足に陥り、国際戦略部門の担当予定だったスタッフや所属する各スポーツ団体も当惑している状態となっている。
その中でクラブが慎重に関係先と話し合いながら事態の打開を進めているが、こういった業務引継で時間がかかってしまったのは想定外で、本来はもっとイベントや集客に集中したかったという思いはあることだろう。
実際に、話題となったジャパネットデーの入場者数は4,618人に終わったが、告知CMが増加し、対戦カードがロアッソ熊本とのバトルオブ九州だったことは考えれば、不本意な数字と言えるだろう。
だが、それを必要以上に悲観する必要はない。今のクラブは一度崩れてしまった土台を再構築している途上であり、新体制の運営能力もこれから徐々に発揮され、問われてくるものと言って良いだろう。入場者はその結果としてついてくるものだ。
私自身、この数ヶ月スタジアムで観客として試合を観戦したが、サポーターの表情や言葉には、クラブが存続する安堵感と新体制に期待する声が多いと感じた。入場者数では大きな変化はなくとも、入場者の満足度という点では向上しているとも考えている。
確かにまだクラブには、改善の余地はある。だが、数ヶ月前まであったスタジアムの重い空気は確実に変り、変革の風が吹いている。本当の意味で「長崎のプロクラブ」になっていくためにも、今は見守っていくことが必要だろう。
(取材・文:藤原裕久【長崎】)
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