数少ない誤算。クラブ運営引き継ぎの難航
高田明社長からすれば、方向性の正しさに手応えを覚えたことだろう。今、長崎のスタジアムでは、高田明社長がにこやかに写真撮影やサインに応じ、多忙を縫って来場した高田旭人社長が「父のようにサインはないんですが(笑)」と言いながら、サポーターの話に耳を傾ける……そんな光景は珍しいことではない。
トップ自らが先頭に立つ中で、新しいアプローチのイベントやチームの好調さにも支えられ、長崎のスタジアムには徐々に「ワクワクさせる何か」が生まれ始めている。
このように着々と変化が進む長崎だが、クラブ運営の引き継ぎに難航したことは数少ない誤算だったようだ。
本来ならば、シーズン中の3月上旬にV・ファーレンへの支援を決定し、5月16日には株式の100%取得を完了させつつ、滞りなく公式戦運営を行えているだけでも大変なことであるが、関係者の多くは「本当はもっといろいろなアイデアがあるが、予想以上に時間がかかり、まだそこまでできていない」と口にする。
時間を要した最大の理由は、前体制が「株式会社V・ファーレン長崎」と「一般社団法人V.V.NAGASAKIスポーツクラブ」で分担しながら多方面に拡大していた業務の複雑さだ。口頭で契約が交わされていたことも多く、一部社員のみで業務を担当していたために、内容、関係性、全体像がわかりにくく、情報収集や確認にも時間がとられたのだという。
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