「みんながついていきたくなるような人」
現役時代はセンターバックとしてプレーした大岩監督は、2003シーズンにジュビロ磐田から加入。2010シーズン限りで引退した後はコーチを務め、米子北高校から加入した昌子を直接指導している。
「剛さんに何度同じことを言われたか。何回同じミスをするねん、何でそこで足を出すねん、と。高校のときにできたことはプロでは通用せんと言われたけど、その通りで歯が立たんかったよね。高校では抑えられていたから、けっこう自信はあったんですけどね」
大岩コーチの厳しくも愛が込められた檄を糧に、心技体をゼロから鍛え直してきたからこそいまがあると昌子は語ったことがある。たとえば中村も、チームメイトのためにもっと走れと発破をかけられてきた。
アントラーズ出身の日本代表FW大迫勇也(ケルン)も、シリア戦前日に大岩監督と談笑している。その人柄を熟知するからこそ、アントラーズの再出発へこんな期待を託していた。
「すごく厳しさがあり、優しさもある人だからね。みんながついていきたくなるような人だし、これからがすごく楽しみですよ」
昨シーズンの陣容に、MFレオ・シルバやペドロ・ジュニオール、クォン・スンテらを補強。戦力的には何ら問題のなかったアントラーズは、ちょっとした袋小路に入りかけていた状態だったと言っていい。
石井前監督が残した足跡はもちろん評価されるが、忌憚なくものを言い、そのなかに愛情も込める大岩監督が見せる大きな、頼れる背中が選手たちには進むべき羅針盤と映ったのかもしれない。
休む間もなく、ACLの関係で未消化だったガンバ大阪との第13節が中2日で行われる。万全を期すために、レイソル戦後に左すねと右ふくらはぎを厳重にアイシングしていた昌子はニヤリと笑った。
「ガンバに勝ってから、(過密日程には)文句をめちゃ言います」
敵地・市立吹田サッカースタジアムでの大一番に勝てば、暫定で上位につけるセレッソ大阪やレイソルを抜き去り、体制下で一気に加速してきたアントラーズの首位ターンが決まる。
(取材・文:藤江直人)
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