日本が学ぶべきこと。強化方針の芯
チリとドイツはどちらもハードワークのチームだった。チリにはテクニックもあった。ドイツほど大きな選手はいないが全員が筋肉の鎧をつけたような体格だ。ただ、チリが昔からこういうチームだったわけではない。
チリが現在のプレースタイルに変わったのはビエルサ監督の時代からだ。同じころ、日本ではオシム監督が「走れ」とハッパをかけていた。岡田監督時代にチリとは二度対戦していて1勝1分と勝ち越している。ホームの親善試合とはいえ、まだそのころは遠い存在ではなかったわけだ。しかし10年ほど経過した現在、チリと日本の差は大きく広がっている。
チリのサッカーはその間、ずっと一貫している。ビエルサからサンパオリ、現在のピッツィと監督は変わっているが指向するプレーは同じ。一方の日本がどうかはご存じのとおりである。いまは「デュエルだ」「縦に速い攻撃だ」と強調されているけれども、負ければまた違うことを言い出すだろう。
ハードワークかテクニックか、ではない。全部なければ世界のトップには行けない。ただ、どの国にも得手不得手はある。ドイツはもともとハードワークの国だが、一時は技術がおぼつかなくなった。
2000年から始めた育成改革によって技術が改善されて現在がある。だからといってドイツが持ち前のハードワークを忘れたわけではない。それは今回の2軍チームをみても明らかだ。
長所を生かし短所をできるだけ克服する。当たり前だが、そうやって強化の成果が出るまでにはそれなりの時間は必ずかかる。しっかり芯を見定めたら、ブレずに続けていく強さが本当の実力をつけていくのだと思う。
(文:西部謙司)
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