テクニックとハードワークのファイナル
「テクニックのある選手を走れるようにするか、走れる選手にテクニックをつけるか。前者のほうが簡単そうだが、走らない選手は本当に走らないのだよ」(イビチャ・オシム)
コンフェデレーションズカップ決勝で走れない選手は誰もいなかった。チリのサンチェスやビダルはチーム最高クラスのテクニシャンだが、どちらも無類のハードワーカーである。テクニックのある選手がハードワークしまくるのは、いわば現代サッカーのトレンドであり、チリはその代表的なチームといえる。
前線からハイプレスをかけ、かわされても二度追い三度追いができる。逆に相手のプレスを巧みなパスワークやドリブルで外す。テクニックとハードワークを高い次元で両立させてきたからコパアメリカ連覇があった。
一方、若手主体のドイツは当然走れる。ただ、チリに比べるとテクニックの怪しい選手が何人かいて序盤にプレッシャーをかけられるとミスを連発していた。カウンターの形になれば個で突破できるヴェルナー、ドラクスラーがいて、後方からの押し上げも速いのでチャンスにはなる。しかし、チリのハードワークに対してテクニックの優位性はなく、チリ有利で試合は進んでいた。
ドイツの先制点、そして決勝点となったゴールは単純にチリのミスである。
自陣ペナルティーエリアのすぐ外でボールを持ったディアスがターンして1人を外したところでボールを足下から離しすぎてしまいヴェルナーに奪われた。ヴェルナーはサポートについたスティンドルに渡してシュートは無人のゴールへ。とくに何もしないままドイツに虎の子の1点が転がりこんできた。
テクニックに優位性のあるチリはそれゆえに墓穴を掘ってしまった。ディアスのタッチが大きくなってしまったのは疲労の表れだろう。