昨季は自身初のJ1に苦しんだことも
移籍初年度の2015年はJ2で17ゴールを挙げ、3年ぶりのJ1復帰を果たしたチームの中で大きな役割を担った。
完全移籍に移行して迎えた昨シーズンは、リーグ戦全34試合にスタメン出場。当初はJ1初挑戦ということを感じさせないプレーを見せたが、特徴を研究した相手が2~3人がかりで対応してくるようになると、武器であるスピードやパワーを発揮できなくなった。責任感の強い彼はそこで下を向くことなく、何とかしてチームに貢献する姿勢を強めていった。
しかし、ドリブルすべきところでボールを運べず、パスを選択すべきところで無理に突破を図ろうとするなど、プレーに冷静さが失われていたのは事実。それでも名波浩監督がスタートから起用し続けたのは、重要な戦力であることはもちろん、日本トップカテゴリーでの苦しい経験が必ず未来に繋がると信じていたからだった。
「まだ若いからここから2、3年で十分にサッカーを覚えていけばいい。『持ったら行け』というサッカーを今までやらされてきていたから」
アダイウトンの脅威が他クラブに知れ渡った昨年のある日、指揮官はこう話している。サッカー王国で磨かれ傑出した爆発力をさらに進化させつつ、守備面や周囲との連係など様々なタスクを根気強く身につけさせようとした。何より、アダイウトン自身に学ぶ心があったことが重要だろう。名波監督に教えを請い、助言に耳を傾けた。
その姿勢は、今シーズンに入ってからも変わらなかった。第5節から7試合連続でベンチスタートとなったが、「非常に有意義な時間だった」と真剣な眼差しをこちらに向けた。