心技体が心地よいハーモニーを奏でたU-20W杯
0-1と1点ビハインドで迎えた後半19分、堂安は万雷の拍手を浴びながら、FWアデミウソンとの交代でベンチへ退いた。その4分後に決まったFW長沢駿の同点ゴールをベンチで見届け、勇気づけられた。
「チームメイトたちが追いついてくれたので、そこは本当に感謝したい」
宇佐美も1年前の国内最終戦で無得点に終わり、ガンバも3‐3でグランパスと引き分けた。ここまでは憧れる宇佐美と異なる点を2つ記したが、いい意味で異なる点も実は2つある。
ひとつは宇佐美ですらアジアの壁の前に跳ね返され、その舞台に立てなかったFIFA・U-20ワールドカップで大活躍を演じたことだ。
アジア大陸に与えられた4枚の切符を争った、昨秋のAFC・U-19アジア選手権。延長戦にもつれ込んだ決勝を含めて全6戦、合計570分間を無失点に封じて初優勝を果たしたU-19日本代表で大会MVPを獲得した堂安は、凱旋したロッカールームで守備陣に感謝の思いを込めながら頭を下げている。
「ディフェンス陣のみんなに、本当に申し訳なかったというか。無失点だからこそ優勝できたと思っているので。特にグループリーグで、コンディションがあまりよくなかった。ボールを失う回数が多くて、あまり効率的な攻撃も仕掛けられなかった。大会を通しても1ゴールだけだったので」
当時はガンバでもJ3が主戦場で、確固たる自信を抱けなかった時期。翻って今年5月に韓国で開催された本大会は、直前にトップチームで結果を残していたこともあって、心技体のすべてが心地よいハーモニーを奏でていた。
果たして、U-20南アフリカ代表とのグループリーグ初戦で決勝点となる逆転弾をあげると、U-20イタリア代表との最終戦では2ゴールをゲット。U-20日本代表の決勝トーナメント進出の原動力となり、世界の目を自身に向けさせた。
その結果として届いたフローニンゲンからのオファー。主戦場を確保したとはいえ、ガンバではまだ3ゴールしかあげていない。タイトルも獲得していない。チームは折り返しを前に、3年ぶりのリーグ優勝を狙える好位置につけている。旅立つには、もちろん後ろ髪を引かれる思いも抱いていたはずだ。