2回戦で大会を去るには、あまりにもったいないチーム
PK戦の末に3回戦へと駒を進めた磐田の名波浩監督は、こんな言葉を残した。
「Honda FCの技術の高さ、穴を突く戦術眼は素晴らしいものがありましたし、どちらに転んでもおかしくないような、2-2でPKという結果通りだった。一瞬の隙で得点と失点が生まれ、観ている人には非常にスリリングなゲームだったなと」
この試合、サポーターは10台以上のバスで敵地に乗り込んできた。平日のナイトゲームにもかかわらず多くの人が集まり、アウェイゴール裏はチームカラーの赤に染まった。栗本は『12番目の選手たち』への想いを口にした。
「明日も仕事がある中でPK戦まで応援していただいて、本当に感謝しかないです。喜んで帰っていただきたかったけど負けてしまい、大きな責任を感じています。申し訳ないなという気持ちと感謝の気持ちがあります」
また鈴木は、未来のHonda FCを支えるであろう人々へ勝利を届けられなかったことを悔やんだ。
「ジュビロに勝ったトップチームを見るだけで、子どもたちに勇気だったり、このチームにいる誇りを持ってもらえたと思う。でも結果、負けてしまった。自分たちの悔しさもあるけど、そういうところの悔しさをすごく感じます」
この日、いくつかの会場でジャイアントキリングがあった。そのため、Honda FCの奮闘は多くは触れられないかもしれない。
しかし、JクラブでもなければJリーグを目指しているわけでもない企業チームが、“対策”ではなく“蓄積”によって観る者をワクワクさせるパフォーマンス披露したという事実は、ここに記しておきたいと思う。
2回戦で大会を去るには、あまりにもったいないチームである。
(取材・文:青木務)
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