今季初先発。中断期間で進めてきた準備
後半終了間際に決まった、MF天野純のJ1初ゴールとなる先制弾を死守。3連勝が今シーズン初めてなら、2戦連続の無失点も初めて。チームの暫定5位浮上に貢献できた喜びが、栗原の表情を綻ばせた。
キックオフの笛を、ピッチの上で聞くのはリーグ戦15試合目にして初めてだった。新加入のDFミロシュ・デゲネクの後塵を拝する形で、これまでは途中出場で3試合、合計41分間のプレーに甘んじていた。
セルビア人としてクロアチアで生まれ育ち、いま現在は難民として渡ったオーストラリアの国籍をもつ23歳の屈強なセンターバックが、この時期にチームを留守にすることは開幕前から予想できた。
オーストラリア代表としてワールドカップ・アジア最終予選に臨み、そのままロシアで開催されるコンフェデレーションズカップをアジア王者の一員として戦う――。栗原は静かに心の準備を整えてきた。
「ミロシュ(・デゲネク)がコンフェデとかに行くのはわかっていたし、ならば自分か(パク・)ジョンスかな、という感じだったけど、自分としては出るつもりで調整してきたので。
ディフェンダーとしては準備期間があるのとないのとでは全然違うし、その意味では2週間、完全にここに照準を合わせることができた。川崎フロンターレと練習試合ができたことも大きかったかな」
ワールドカップ・アジア最終予選による中断期間を、身心を練りあげる時間に当てた。YBCルヴァンカップの予選リーグ6戦にフル出場してきたことで、体のコンディションは維持できていた。
ならば、心のほうはどうだったか。中澤佑二とのコンビで、堅守と謳われたマリノスの最終ラインを支えてきた。しかし、エリク・モンバエルツ監督が就任した2015シーズンから、出場機会が激減する。
中澤の相棒として重用されたブラジル人のファビオが、このオフにガンバ大阪へ移籍した。しかし、入れ替わるようにデゲネクが加入する。モチベーションの維持は、決して楽な作業ではなかったはずだ。
「でも、今シーズンに限らず、昨シーズンもその前も状況的にはそうだったし、そこは自分のなかで上手くやってきたつもりです。今日のような機会が来たときに、結果を出せるように取り組んできたので」