アルゼンチン人指揮官による演説の場
ここはアトレティコ・マドリーの本拠地、エスタディオ・ビセンテ・カルデロン。今日も試合中、応援の音頭を取る北スタンドは「オレ! オレ! オレ! チョロ・シメオネ」のチャントを高らかに響かせる。
メインスタンドの最上段にある記者席に座る僕は、まずチャントを叫んでいる彼らを右手に見て、その次に反応して飛び上がるほかのスタンドの観客を確認し、最後に左のテクニカルエリアに目をやる。
黒いスーツを身に纏ったそのチャントの対象となる男、ディエゴ・パブロ・シメオネは、両手を上げながらそれに応じている。
これを書いている時点で、シメオネが監督としてアトレティコに戻ってきてから、すでに6年近くが経過している。アトレティコはその期間内で、ヨーロッパリーグ、UEFAスーパーカップ、コパ、リーガのタイトルを獲得。
その日々の中でシメオネ率いるアトレティコの形容は「戦えるチーム」「14年勝てずにいたマドリーダービーの呪いを打ち破ったチーム」「新たな黄金期を過ごすチーム」「アトレティコ史上最高のチーム」と変わっていき、「オレ! オレ! オレ! チョロ・シメオネ!」はさらなる力強さで響き渡っている。その信頼関係は一度も揺らいだことがない。
カルデロンに試合終了のホイッスルが響いた後、僕は階段を降りて会見場に足を運ぶ。まずアウェイチームの監督が出席し、シメオネはその後にアトレティコの広報と個人広報とともにやって来る。
アトレティコの広報が「ディエゴ・シメオネの会見を始めましょう」と決まり文句を口にしてから、アルゼンチン人指揮官の演説がスタートする。