レイソルが長年追い求めた「8+3」
決して芳しくなかった開幕前の下馬評を鮮やかに覆し、全日程の半分近くを消化したJ1の首位を走っている柏レイソルが、長く追い求めている数字がある。
それは「8+3」――。
先発メンバー11人のうち、3人の外国人選手を除く8人を、柏レイソルU-18以下のアカデミー出身の選手で占めようという壮大なプランだ。
はっきりとした目標として掲げられたのは2010シーズンの後半。U-15およびU-18のコーチや監督を歴任してきた吉田達磨(現ヴァンフォーレ甲府監督)が、アカデミーダイレクターに就任した年だ。
それまでは各カテゴリーを率いる指導者によって異なっていたコンセプトを、吉田が標榜してきた「自分たちがボールを保持する攻撃的なサッカー」で統一。U-12からU-18まで強く、太い芯が通された。
2010シーズン当時のU-18の1年生には、ハリルジャパンに招集されたGK中村航輔、前線のダイナモとしてポジションを確立した身長155cmのMF中川寛斗がいた。
さらに、U-15の最上級生にあたる中学3年生にはDF中谷進之介、2年生ではMF手塚康平がプレー。翌2011シーズンには、茨城県竜ケ崎市の愛宕中学校でプレーしていたDF中山雄太も加わる。
ここまで名前を挙げた5人はいま、トップチームの先発メンバーに名前を連ねている。2010シーズン当時すでにU-18を巣立っていたDF輪湖直樹、FW武富孝介も吉田の薫陶を色濃く受けている。
そこへU-15に入団した1997シーズンからレイソルひと筋でプレーするバンディエラで、不動のキャプテンでもある32歳のMF大谷秀和を加えた8人は、代表招集による離脱を除いて5月に入ってから一度も先発から外れていない。
今季をさかのぼれば、1‐2で苦杯をなめた3月10日の川崎フロンターレ戦で初めて「8+3」が実現した。さらにさかのぼること1年。昨年3月19日のサガン鳥栖戦、電撃辞任したミルトン・メンデス前監督からバトンを引き継いだ下平隆宏監督の就任2試合目で、実は「8+3」が達成されていた。
「クラブとして『8+3』を目指してきましたが、だからといって意図的にアカデミー出身の選手を使っているのではなく、当然ですけれどもしっかりとした競争の中から、調子のいい選手が使われています」