試合中の布陣変更もなし。プランの整合性に付いた疑問符
1つの解決策としては前半の途中に2列目の並びを変更することもできた。久保を右、本田を中、原口を左という配置だ。守備のリスクはそれほど無く、攻撃に幅を持たせることができたはずだ。
指揮官は過酷な状況でコンディションも見ながら、攻守に走れるメンバーをチョイスしたのだろう。前半途中あるいは後半の早い時間帯に追加点を奪うプランから考えれば、攻撃面に効率性を欠き過ぎた。
もちろん2人のけが人が出なければ、後半に乾貴士や岡崎慎司を選択することもできたはずで、そのプランがアクシデントで崩れてしまったことは確かだ。
それでもセットプレーで得たリードを守り切ってしまっていれば、勝ち点3という結果を持ち帰ることができたわけだが、シリア戦から一気に環境が変わるにしても、計画性を欠いていたことは否めない。
突き詰めて問題点を問うなら、これだけ試合環境が変わるテヘランでの試合に向けて、ホームでテストマッチを行うことにどれほどの意味があったのかということになってくるが、そこはハリルホジッチ監督の権限を超えてくる。
与えられた条件の中でどれだけの効率よく準備して公式戦に臨めるかという意味でも、プランの整合性に疑問符が付いた。
収穫は1つ間違えば敗戦のリスクもある状況の中で勝ち点1を獲得したこと。若い選手も含め、チームがこのようなタフな試合をまた1つ経験できたことだ。脳しんとうを起こした井手口や足を負傷した酒井宏は心配だが、選手たちは次のオーストラリア戦に向けてクラブで成長し、コンディションを高めて代表チームに集まってくることを期待する。
そこには怪我で今回のシリーズを欠場した長谷部誠キャプテンやシリア戦の怪我で離脱した香川の姿もあるだろう。
今回のイラク戦は最終予選のここまでの8試合で最も過酷な環境だったことは間違いないが、サウジアラビアの“完全アウェイ”となる最終戦はさらに厳しいものとなる。
その前にホームのオーストラリア戦できっちりと勝利し、本大会の切符を掴んでサウジアラビアに乗り込む。そのために良い意味で仕切り直し、この苦い経験を歓喜につなげてもらいたい。
(文:河治良幸)
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