ボールに食いつきすぎるという弱点。攻撃のオプションはなし
日本の守備の弱点はボールに食いつきすぎるところだ。アグレッシブにいけと指示されているのだろうが、ときどきそれが裏目に出る。失点場面では遠藤がボールに釣り出されところから玉突き的に対応が遅れ、ペナルティエリア内まで侵入を許していた。ただ、イラクの選手は転倒していて危機はいったん終わっている。
こぼれ球の近くにいた吉田は、飛び出してきた川島に任せようとした。ところが、吉田の背後からカッラールが足を伸ばしてボールをつつき、こぼれ球をシルターに蹴り込まれてしまう。
吉田がカッラールの来る方向に立ってブロックしておけばなかった失点だろう。ただ、その前の展開でイラクに押し込まれていて守備ブロックが深くなりすぎていたのが遠因であり、消耗して足をなくしていたのが根本的な原因といえるかもしれない。
同点にされた後、日本は2点目を狙って攻勢をかけた。しかし、左サイドは久保が負傷して走れないために長友が不用意に前に出ることはできなかった。酒井高徳と本田のコンビで右から崩そうとするが打開しきれず。
もともと攻撃のオプションが限られているうえ、負傷者2人の交代で3枚のカードを使い切ってしまっていたので打つ手もない。最後は吉田をトップに上げて本田のシュートにつなげたがGKの正面をついた。
守備的なゲームプランで臨んでいるのでドローは想定内といっていい。
カウンターアタックでの優位性を出せるスピードのあるFWはおらず、大迫か本田が絡んだときの単発的なコンビネーションぐらいしか攻め手がない以上、点がとれないのは仕方がない。
ゼロで抑えてしまえばプランどおりで、それに近い守備はできていた。引いたときの吉田、昌子の安定感もあった。ただ、日本の守備組織に安定感があったわけではなく、イラクのフィニッシュへのアプローチがハイクロスだったので助かったところはあったと思う。
次のホーム、オーストラリア戦は全く違った試合になるはず。メルボルンでの守備的な試合も再現されない。日本の長所を発揮して勝ち、ワールドカップ出場を決めてほしい。
(文:西部謙司)
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