イラク代表の選手たち【写真:Getty Images】
日本代表は13日、ロシアW杯アジア最終予選でイラクと対戦して1-1で引き分けた。
試合開始前の気温は35度を超え、猛烈な暑さの中で選手もサポーターも死力を尽くして戦った。特にイラク戦のためイランを訪れるサポーターやメディアを苦しめていたのは、「ラマダン」だった。
イスラム教の教義において、毎年イスラム暦の9月は「ラマダン」と呼ばれる断食期間となる。今年は5月26日から6月24日までで、その間ムスリムは日の出から日没まで飲み食いせずに過ごさねばならない。
猛暑の中、街中の飲食店なども営業しなくなる場合があり、日中は照りつける日差しにさらされながら水や食べ物を摂取することができない。もちろん人目につかないところでこっそり飲食することもあるようだが、公の場で戒律を破ることは難しい。
ラマダンの影響はサッカーの試合中にもあらわれると思われた。イラクの選手たちは、酷暑でも試合開始から終了まで水を摂れないのではないかという懸念もあった。
しかし始まってみると、イラク代表の選手たちは回数こそ少ないものの、適宜水分補給を行っていた。前半30分ころに設けられた飲水タイムでもしっかりと水を飲んで戦っていた。なぜ彼らは「ラマダン」を無視するような行動に出られたのか。
それには理由がある。実は「ラマダン」は特別な理由があれば免除が認められている。例えば「旅行者」として海外に滞在している場合、あるいは「兵士」として戦いに身を置いている場合などが免除の対象となる。
これらの解釈はあいまいで、「ラマダン」の実行はムスリム内でも個々の判断に任されているのが実情だ。例えばサッカー選手の海外遠征は「旅行者」と捉えることができ、今回のイラク代表もその解釈をもとにして試合中に水分補給を行っていたと考えられる。
なお、12日にテヘランで行われたイラン対ウズベキスタンは、キックオフ時間が日没後の現地時間21時に設定されていたため、試合中でも問題なく水を飲むことができた。
気温35度の中でサッカーのような激しい運動をする場合、当然熱中症などのリスクがある。最悪の場合は命にも関わるため、イラク代表が「ラマダン」中でも水分をしっかり補給したことは賢明な判断だっただろう。
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