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日本代表 7年前

乾貴士、勝ち取った「ジョーカー枠」。2年ぶり代表で「楽しむ」を具現化できた3つの理由

text by 藤江直人 photo by Getty Images

「人に言われてやるときって、楽しくないと思うんですよ」

 次は自分が得意とするプレーを、躊躇することなく繰り出せたことだ。シリア戦のピッチへ送り出される際に、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督から与えられた指示は単純明快だった。

「どんどん裏を狙っていけ」

 もっとも、ただ単に同じプレーを続けていてはワンパターンになるし、相手の脅威にもならない。だからこそ最初のプレー、冒頭で記したドリブルによる中央突破で相手に強烈な印象を焼きつけた。いわば「餌」をまいたうえで、相手の心理状態を読みながらプレーに変化をつけた。

「ただ裏ばかりを狙っていても、ちょっときついかなと思っていたので。慌ただしい時間帯が続いていたというか、そのなかでちょっとミスが増えていた。ちょっと落ち着かせるところは落ち着かせながら、プレーしなきゃいけないと、自分では思っていたので。

 落ち着くというのは、決してプレーを遅くするというわけじゃない。落ち着きながらも、そのなかで次のプレーに対する判断を早くして、お互いのいいところを出していかないといけない。それは難しいことですけど、それでもやっていかないといけないことなので」

 エイバルとハリルジャパンの違いは、特に攻撃面ではボールの受け方にあった。前者では足元で受けたうえで、個人技やサイドバックとのコンビネーションを駆使しながら仕掛けていく。

 翻って後者ではまず相手の最終ラインの裏を突き、そこでボールをもらって相手ゴールに迫っていく。それでも、裏を狙い続けるだけの一辺倒な攻撃は仕掛けない。指揮官の指示に対する、ちょっとした反抗と言ってもいい。実際、乾はこう語ってもいる。

「人に言われてやるときって、楽しくないと思うんですよ。自分から何かをやっていかないといけない。自分のプレーを出すために何をやるか、ですよね。自分のプレーを出せたときに、一番楽しくやれるので」

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