ウィングで生きない本田の個性。中盤ではそれが武器に
シリア戦を振り返っても、右は久保と本田、浅野、左は原口と乾が使われたが、本田以外の彼らはいずれも縦への推進力を前面に出すタイプ。浅野も「前への意識は常に持っていますし、シリア戦に関しても裏とゴールを狙っていた。あとは味方のタイミングに合わせるだけ。出るのはたぶん右だと思うので、それを考えながらやっていきたい」と久保と違った個性を出しながら生き残ろうとしている。
となると、やはり本田や香川、清武、そして宇佐美のようにボールにたくさん触ってリズムを作るタイプはインサイドハーフがベストではないか。長友は「(インサイドハーフが)圭佑のベストポジションかどうかは分からないですよ。センターバックかもしれないし」と冗談交じりに話したが、本田が中盤に入る形の出来に手応えを感じているようだった。インサイドハーフは近い距離に2人配置できるため、日本に多いテクニカルな選手を数多く使えるメリットもある。
問題はアンカー脇のスペースをいかに連携しながら埋めるのか。そして、高い位置でボールを奪う守備ができるのかという点だ。その難題は一朝一夕にクリアできるものではないが、代表の活動期間が限られていることを受け入れ、短時間で最大限の強固な組織作りをしていくしかない。
幸いにして今回はテヘランでのトレーニングが4日間ある。そこで戦術の徹底を図り、イラクの出方によって臨機応変に対応できるような下地を作れれば理想的だ。本田という発信力のあるリーダー、今野というベテラン選手が中盤にいれば、組織作りも進めやすい。
8日のリカバリートレーニングでも2人がランニングしながらコミュニケーションを密に取っている姿が見られただけに、イラク戦を何とか乗り切りたいと言う自覚は強いはず。シリア戦を踏まえ、ハリルホジッチ監督が中盤の構成をどうするのか。その選択がイラク戦の生命線といっても過言ではないだろう。
(取材・文:元川悦子)
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