左利きの本田がインサイドハーフに入る効用
「タメを作れるし、俺としては左利きの人が左を見てくれるので、あそこで受けられる。チャンスになったシーンもそうですし、右利きだとなかなかああいうボールは出せないので、圭佑くんがあそこに入ることで、左のワイドの選手は楽になると思います」
本田がインサイドハーフに入ることのメリットを乾はこう説明する。「それができる時は日本は強いと思います」と乾。
確かに本田と乾の間で流動的なパス交換をしたわけではない。しかし、本田が中で作って左で乾が仕掛けるという関係ができたことで、日本の攻撃に筋が通ったことは間違いない。さらに、前線の大迫勇也がシンプルなポストプレーで絡むとにより、「中、左、前」という崩しの三重奏が完成した。
「高い位置でボールを受けて勝負ができるので。やっぱり前半は高い位置でボールを受けることがなかったので、そういうところが前半と後半の違いかなっていうふうに思います」(乾)
後半37分には本田がボールをキープした所から大迫がクサビで落とし、乾が仕掛けてシュートを放つも、ペナルティエリア内に侵入していた大迫の体に当たってしまった。
明らかに攻撃が機能していた時間帯に大迫を下げ、岡崎慎司を投入したのは親善試合ならではの選手交代で、予定されていたものかもしれない。
乾のパスを岡崎がコントロールできていれば決定的なシュートにつながりそうなシーンはあったが、終盤は岡崎が試合感を取り戻すために“消費”された感はいなめなかった。
とにかく乾が投入され、さらに本田がインサイドに入ってからの日本代表の攻撃はこの“三重奏”を中心に、時にアクセントで中盤の倉田秋や左サイドバックの長友佑都が、フィニッシャーとして逆サイドから浅野が絡むことで四重奏、五重奏にもなる相乗効果を生んでいた。そこから結局ゴールが生まれなかったことは残念だが、あとはアウェイの環境でも機能できるのかだ。
もちろん、左サイドには先制点の起点になった原口元気もおり、ハリルホジッチ監督がどのシチュエーションでどういう選択をするか分からないが、最終予選の最中で明確なオプションが加わったことを実感させたシリア戦だった。
(取材・文:河治良幸)
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