攻撃面の“デュエル”で違いを生む乾の力
中盤で選出された遠藤は[4-3-3]のインサイドハーフも選択肢になるが、基本的にはリオ五輪代表時代のメインポジションだったアンカーで山口に挑む立場になりそうだ。この位置での高いボール奪取力に加え、カウンターのリスク管理や空中戦といった多様なシチュエーションでの守備能力を発揮すれば代表の中盤に新たなオプションを加えることができる。攻撃面も細かいパス回しよりダイナミックな展開が鍵を握るため、出場すればうってつけのアピールチャンスだ。
彼らとは違った意味で“デュエル”を期待される選手が2年2ヶ月ぶりの招集となったMF乾貴士だ。スペイン1部のエイバルで確かな存在感を示した乾は左サイドで守備のハードワークも目立ったが、やはり特徴はボールを持った時の勝負強さだ。「攻撃の部分の特徴も出していけた」とシーズンを振り返る乾はボールを失うことなく起点になるプレーをベースに、高い位置でチャンスに絡むことを強く意識している。
「緊張感を持ち過ぎると空回りしちゃうので、いつも通り平常心でやっていきたいですけど、その中で結果がついてくれば一番ですね」
そう語る乾は合流当初から右足首に痛みを抱えていたものの、欧州組合宿中の電気治療などで症状は確実に良くなっており、チャンスがあれば出場する準備はできている。ハリルホジッチ監督はシリア線前日記者会見で「ようやくパフォーマンス上がってきた。フィジカル的にかなり準備ができている」と回復を強調した。
「試合に入ったとしても5分でケガになるかもしれない」と、まだリスクを完全に取り払えたわけではないようだが、スタメンではなかったとしても、乾にはジョーカーとして途中から攻撃に違いを生み出す役割も期待される。タフなゲーム展開になるほど彼の攻撃における1対1の勝負強さが大きな武器になる可能性は高い。左サイドで原口元気に挑む構図になり、ハリルホジッチ監督が「宇佐美との競争」だと語った通りライバルは多く、今後に向けて少しでもアピールしておきたいところだ。
チームには色々な要素があるが、新しく選ばれた選手やこれまで十分なチャンスを得られていない選手がここからポジションや役割を勝ち取っていくための重要なポイントが“デュエル”であることは間違いない。シリア戦において、そこで大きくアピールする選手が出てくれば、それは過酷な環境での戦いが想定されるイラク戦での確かな力となるはずだ。
(取材・文:河治良幸)
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