傑出した個の打開力は日本代表の新たな武器に
日本代表でもそうなれるか否かは、乾自身の取り組み方しだい。自らエイバルのような心地よい環境に仕向けていくことができれば、原口と違った個性を発揮して、住み分けが可能になるのではないだろうか。
抜群の走力とフィジカル的な強さを生かして縦への推進力を見せる原口と、細かいドリブルや繊細なパスといった高度なテクニックを駆使する技巧派の乾にはやはり違いがある。その能力を巧みに使い分けられれば、日本代表の攻撃バリエーションは確実に広がる。ハードワークを辞さない原口が試合開始時から相手をかく乱し、守備陣が疲れたところで乾を投入して個の打開力から1点をもぎ取るといった、試合の中での駆け引きも考えられる。
爆発的なスピードを誇る浅野がケガを抱えていてシリア戦で使えない可能性が高いだけに、乾にはジョーカー的役割も期待される。どの時間帯から出ても、乾の長所であるスピードと走力、テクニック、局面打開力、フィニッシュの迫力といった要素を強く押し出すことができれば、13日の最終予選・イラク戦(テヘラン)、そしてその後の日本代表定着にもつながってくるはずだ。
「この2年間、代表に呼ばれなかったのは、チームで結果を出せていなかったから。だけど逆に代表のことをそんなに考えずやれたので、プレッシャーもなかった。それはよかったと思います。今回もし監督に使われるなら、しっかり代表のことを考えて、勝つことだけを意識してやりたいと思います」とフォア・ザ・チーム精神を強調した乾。
今までとは違って彼が本当にその姿勢をピッチ上で貫けるのなら、代表に新たなエッセンスがもたらされるのは間違いない。スペインで養った全ての力を解き放ち、ハリルホジッチ監督を唸らせるような存在感を示してほしいものだ。
(取材・文:元川悦子)
【了】