猛烈な運動量による消耗。体力と気力でも上回られ…
そしてユーベの問題は、その後に巻き返すにも相手に体力と気力で上を行かれたことだ。レアル・マドリーの選手は実によく走っていた。特にインサイドMFを務めたルカ・モドリッチやトニー・クロースの2人は、パス出しのみならず守備に前線へのランニング、そしてドリブルによるボールの推進までありとあらゆることをやっていた。
カゼミーロのゴールから3分後、まさにそのモドリッチがボール奪取から果敢に前に飛び出して、クロスを放っている。この時ユーベのDF陣は完全にボールだけを目で追ってしまい、クリスティアーノ・ロナウドの動きを見逃してニアに入られるという、これまでにやらなかったミスを犯した。
これまでの守備の固さは、前線や中盤の選手の貢献あってだということをユーベのDF陣は良く理解していた。つまりサイドでボールが簡単に奪われボールを運ばれた時点で、劣勢を強く悟ったのかもしれない。そして、それをリカバーするための気力も切られていた。
「今日の勝利はフィジカル面でも優位性を証明した上での勝利だ」とジダン監督は試合後の会見で強調していた。タレント軍団にトレーニングを課し、ちゃんと実行させることができたことの証明でもある。マネジメントも適切で、試合の読みも冷静沈着だったジダンは、指導者として正しい評価を受けるに足る。そしてユベントスは、そんな彼らに走り負け、競り負けた。
そもそも1点を追う展開になり、リスクを冒して果敢に攻めざるを得なくなった時点で、ユベントスは不利に追い込まれていた。
現在の戦術は、サイドハーフを中心に猛烈な運動量を選手に要求する。しかも4-2-3-1システムに固めた後半戦からは、起用できるメンバーも固定化していた。結局それが体力上の”負債”として蓄積し、技術とスピードで上回られ、チームとしての規律遵守でも互角なレアル・マドリーとの一戦で表面に吹き出したということかもしれない。
「CLで勝つための準備は、以前より整っている」と、アッレグリ監督もユベントスの選手たちも語っていたはずだった。確かにその通りに成長を遂げてはきたが、メガクラブをねじ伏せて優勝を奪うには力不足だったということになる。「サイクルは終わっていない。これに選手を補強さえすればチームはもっと強くなる」と指揮官は語ったが、どんな上乗せが可能となるのだろうか。
(取材・文:神尾光臣【カーディフ】)
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